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【例文付き】IT業界の志望動機を作る7STEP|業界の基礎知識・構成・書き方のポイントを解説

IT業界の志望動機の作り方を7STEPで解説。「なぜITか」を言語化する方法から、業界の基礎知識、構成の型、通過するESのポイントまで元人事が具体的に伝授します。業種別・職種別・状況別の例文も掲載しています。

「IT業界に興味はあるが、志望動機が『将来性』や『手に職』といったありきたりな内容になってしまう」「未経験からエンジニアを目指す理由がうまく伝えられない」。
これは、文系・理系問わず、ITを志望する多くの学生がぶつかる壁です。説得力のある志望動機を作るには、単なる憧れではなく、採用視点に基づいた論理的な構成が欠かせません。

本記事では、元日系大手人事で、en-courageの就活サポーターとしても学生を支援している成田さんの解説と、en-courage利用者へのインタビューを基に、採用担当者に響く志望動機を作る7つのステップをお伝えします。業界の基礎知識から構成・書き方のポイント、業種・職種別の例文まで掲載していますので、ぜひお役立てください。

IT業界の採用担当者が志望動機で見ているポイント

「IT業界の人事が志望動機で見ているポイント」というタイトルのスライドです。人事が重視する3つのポイントとして、1つ目に最重要項目である「なぜIT業界か」を言語化できているか、2つ目に「なぜその企業なのか」という他社との差別化、3つ目に「入社後にどう貢献できるか」が挙げられています。下部には成田さんという人物のアイコンと共に、志望動機は単なる書類ではなく、本気度と将来性を証明するプレゼンテーションの場であるというアドバイスが記載されています。

IT業界において志望動機は、技術力(ポテンシャル)と並んで合否を分ける重要な要素です。ここでは、元人事の成田さんの視点を踏まえ、採用担当者が重視するポイントを解説します。

【最重要】「なぜIT業界か」を言語化できているか

最も重要な点は、数ある業界の中で「なぜIT業界なのか」という理由が明確であることです。経済産業省の調査でも示されている通り、IT人材は今後も不足が予測されており、企業は長期的に活躍できる人材を求めています。
そのため「将来性があるから」「給与が良いから」といった表面的な理由ではなく、自身の経験に基づいた「ITでなければならない理由」や「ITを使って何を実現したいか」という熱意を論理的に伝える必要があります。

ただの「PC好き・スマホ好き」で終わっていないか(消費者視点からの脱却)

「普段からアプリを使っている」「貴社のサービスが好き」といった理由は、きっかけとしては良いものの志望動機としては不十分です。
採用担当者が求めているのは、ユーザーとしての感想ではなく、サービスを提供する「作り手」としての視点です。そのサービスがどのような技術で成り立っているのか、ビジネスとしてどう展開されているのかを分析し、「自分ならこう貢献したい」「技術を用いてこのような課題を解決したい」というビジネス視点での動機が、他者との差別化につながります。

将来性や安定性だけでなく「自ら学ぶ意欲」があるか

IT業界は技術の進化が非常に速く、常に新しい知識の習得が求められます。「安定しているから」「研修制度が整っているから」といった受け身の姿勢では、変化の激しいこの業界での活躍は難しいと判断されかねません。
企業が見ているのは、変化を楽しみ、自ら主体的に学び続ける姿勢があるかどうかです。「最新技術をキャッチアップし続けたい」「自らのスキルで課題解決に挑みたい」という高い成長意欲と学習意欲を示しましょう。

なぜその企業なのか(他社との差別化)

「なぜIT業界か」が明確になった後は、「なぜその企業なのか」を伝えます。IT業界にはSIer、Web系(自社開発)、SESなど異なるビジネスモデルが存在し、それぞれ役割や働き方が異なります。
志望する企業がどのポジションにあり、どのような強みを持っているかを理解した上で、自分の実現したいことと企業の方向性が一致していることを示しましょう。「他社でもよい」と思われないよう、その企業独自の強みやビジョンに絡めた志望動機が求められます。

入社後にどう貢献できるか

熱意や志望度が高いだけでなく、入社後に実務でどう貢献できるかをイメージさせることも重要です。
IT業界では、課題を分析し解決策を導き出す「論理的思考力」や、チームでプロジェクトを進めるための「コミュニケーション能力」が不可欠です。未経験であっても、これまでの経験から培った強みをIT業界の業務にどう活かせるか、またはこれからどうスキルを身につけていくかというポテンシャルを具体的にアピールしましょう。

IT業界の志望動機を作る7つのステップ

「IT業界の志望動機を作る7つのステップ【全体像】」というタイトルのスライドです。志望動機作成のプロセスが順に記されており、ステップ1のIT業界の基礎知識を押さえることから始まり、業界への魅力整理、その企業への魅力整理、自分の強みの整理、構成や書き方の把握、例文を参考にした執筆、そして最後のステップ7として就活のプロに添削してもらうことまでが一覧で示されています。

en-courage利用者へのインタビューや、多くの就活生を支援してきた成田さんの知見に基づくと、IT業界の志望動機を作成するには7つのステップを踏むと内定に近づくことがわかりました。次のセクション以降では、以下のステップに沿って解説していきます。

【ステップ①】IT業界の基礎知識を押さえる

説得力のある志望動機を作るには、土台となる業界知識が欠かせません。成田さんは、「業界構造やビジネスモデルの違いを正しく理解している学生は、それだけで志望度の高さを評価される」と指摘します。まずはIT業界の全体像を把握しましょう。

IT業界の仕組みと5つの分類

「IT業界の仕組みと5つの分類」というタイトルのスライドです。業界を構成する5つの主要な分類として、「インターネット・Web業界」「情報処理サービス業界」「ソフトウェア業界」「ハードウェア業界」「通信業界」が図示されています。下部には、これらは相互に関連しているものの、ビジネスモデルや主要な顧客が異なるという補足説明があります。

IT業界は提供するサービスや役割によって、大きく以下の5つに分類されます。これらは相互に関連し合っていますが、ビジネスモデルや主要な顧客(BtoBかBtoCか)が異なります。

  • インターネット・Web業界:Google、楽天、LINEヤフーなど。ECサイトやSNSなど、インターネットを通じて個人や企業にサービス(BtoCサービス・プラットフォーム)を提供します。変化が激しく、トレンドへの感度が求められます。
  • 情報処理サービス業界:NTTデータ、日本IBMなど。SIer(システムインテグレーター)と呼ばれ、顧客企業の課題解決のためにシステムを企画・構築・運用します。顧客へのヒアリング能力やプロジェクト管理能力が重視されます。
  • ソフトウェア業界:Microsoft、オラクルなど。OSやアプリケーション、セキュリティソフトなどを開発・販売しています。製品そのものの機能や使いやすさが価値となるため、高い技術力が求められます。
  • ハードウェア業界:日立製作所、Apple、ソニーなど。PC、スマホ、サーバー、IoTデバイスなどを開発・製造しています。近年はハードとソフトの連携が重要視されており、ものづくりへのこだわりが必要です。
  • 通信業界:NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど。固定電話、携帯電話、インターネット回線などのインフラを提供します。社会基盤を支える公共性の高さと、5G/6Gなどの次世代技術への対応が特徴です。

IT業界の主な職種と仕事内容

「IT業界の主な職種と仕事内容」というタイトルのスライドです。職種が大きく3つに分けられており、1つ目が「エンジニア」、2つ目が「営業・コンサルタント」、3つ目が「マネジメント・その他」と表示されています。下部には成田さんのコメントとして、システムを作るエンジニアだけでなく多様な職種があるため、どの職種で価値を発揮したいかを明確にするべきだという助言が書かれています。

IT業界には、システムを作るエンジニアだけでなく、多様な職種があります。どの職種で価値を発揮したいかを明確にしましょう。

  • エンジニア職:SE(システムエンジニア)、PG(プログラマー)、インフラエンジニア、Webエンジニアなど。顧客の要望を聞いて設計・開発を行います。
  • 営業・コンサルタント職:ITコンサルタント、セールスエンジニアなど。技術知識を持って顧客の課題を抽出し、解決策としてのシステム導入を提案します。
  • マネジメント・その他:PM(プロジェクトマネージャー)、社内SE、データサイエンティストなど。プロジェクトの進行管理や、社内システムの運用、データの分析などを担います。

【ステップ②】IT業界にどういう魅力を感じたのかを整理する

成田さん曰く、選考を通過する学生は「なぜITでなければならないのか」を自分の言葉で語っていると言います。「なんとなくかっこいいから」ではなく、自身の価値観と照らし合わせて魅力を整理しましょう。

IT業界ならではの仕事の魅力・やりがい

「IT業界ならではの仕事の魅力・やりがい」というタイトルのスライドです。魅力として4つの項目が挙げられており、1つ目は社会インフラを支える影響力の大きさ、2つ目は変化が激しく常に新しい技術や知識に触れられること、3つ目は業務効率化や課題解決によって顧客に貢献できること、4つ目は「手に職」をつけられ市場価値を高めやすいことが記載されています。

社会インフラを支える影響力の大きさ

金融、物流、医療など、現代社会のあらゆるシステムはITによって支えられています。システムが止まれば社会機能が停止するほどの影響力を持っています。「人々の当たり前の生活を支えたい」「社会基盤となる仕組みを作りたい」という思いは、責任感や社会貢献意欲のアピールにつながります。

変化が激しく、常に新しい技術・知識に触れられる

IT技術は日進月歩で進化しており、AIやIoT、クラウドなど新しい技術が次々と生まれています。「知的好奇心が旺盛で、新しいことを学ぶのが好き」「変化のない環境よりも、常に進化し続ける環境で成長したい」という人にとって、IT業界は非常に魅力的なフィールドです。

業務効率化や課題解決によって顧客に貢献できる

ITの本質は課題解決にあります。手作業で行っていた業務を自動化したり、データを活用して売上を伸ばしたりと、顧客の課題をダイレクトに解決できるのが醍醐味です。「誰かの役に立ちたい」「非効率なものを改善するのが好き」という原体験がある場合、この点を強調すると説得力が増します。

「手に職」をつけられ、市場価値を高めやすい

専門的なスキルや知識を身につけることで、自身の市場価値を高められる点も魅力です。実力主義の側面があり、若手のうちから裁量を持って働ける企業も多くあります。「自らのスキルでキャリアを切り開きたい」「専門性を磨いて長く活躍したい」という自立心の強さや成長意欲をアピールできます。

「ITに興味を持ったきっかけ」を具体化する自問リスト

「ITに興味を持ったきっかけを具体化する質問リスト」というタイトルのスライドです。自分の興味を深掘りするためのチェックリストとして、IT技術で生活が便利になったり感動した経験の有無、非効率な作業を改善した経験、プログラミングやモノづくりで楽しかった瞬間、変化の激しい環境へのワクワク感、専門スキルを身につけて自立したいかどうかの5つの質問が並んでいます。

「なぜITか」を明確にするために、以下の問いかけを自分にしてみましょう。

  • IT技術を使って生活が便利になった、感動した経験はあるか?
  • 非効率な作業を工夫して改善し、達成感を得た経験はあるか?
  • プログラミングやモノづくりに触れて、楽しいと感じた瞬間はいつか?
  • 変化の激しい環境に身を置くことにワクワクするか?
  • 専門スキルを身につけて、自立して働きたいと思うか?

これらの問いに対する答えを書き出し、自分の言葉で説明できるように整理しておくことが大切です。

【ステップ③】その企業にどういう魅力を感じたのかを整理する

en-courage利用者にインタビューをしたところ、内定者の多くが「企業ごとの独自性を徹底的にリサーチした」と回答しています。競合他社と比較し、その企業でなければならない理由を明確にしましょう。

企業研究で見るべきポイント

「企業研究で見るべきポイント」というタイトルのスライドです。企業分析を行う際の4つの視点として、「開発実績」「技術スタック」「主要顧客」「独自技術」が挙げられています。下部には成田さんのコメントがあり、これら4つの視点で分析を行うことで、競合他社ではなくその企業を志望する理由に説得力を持たせられると説明されています。

企業研究を行う際は、以下の視点で情報を集めると特徴がつかみやすくなります。

  • 開発実績:どのようなシステムやサービスを開発しているか(金融系、公共系、エンタメ系など)。
  • 技術スタック:どんなプログラミング言語や技術を使っているか(Java、Python、AWSなど)。
  • 主要顧客:主な取引先はどこか(官公庁、大手企業、一般消費者など)。
  • 独自技術:その企業だけが持つAI技術や特許などはあるか。

「SIer」か「自社開発(Web)」かによる志望動機の違い

「SIerか自社開発かによる志望動機の違い」というタイトルのスライドです。SIerと自社開発(Web)それぞれの特徴が対比されています。SIerの志望動機に関連する特徴としては、様々な業界のシステムに関われることや顧客と一緒にシステムを作り上げることが挙げられ、自社開発の特徴としては、ユーザーの反応をダイレクトに受けられることやサービスを育てていくスピードが速いことが挙げられています。

ビジネスモデルによって、アピールすべきポイントが異なります。

  • SIer:「顧客の課題解決」が主眼。様々な業界のシステムに関わることができ、顧客と一緒にシステムを作り上げる点が魅力。
  • 自社開発(Web):「自社サービスの成長」が主眼。ユーザーの反応をダイレクトに受け、サービスを育てていくスピード感が魅力。

働く環境について見るべきポイント

「働く環境について見るべきポイント」というタイトルのスライドです。環境の違いを確認する3つの視点として、「業務範囲」「研修制度」「社風」が提示されています。下部には成田さんのコメントとして、働く環境の違いも「この企業を志望する理由」になるため、これらの点に着目すべきであると記されています。

働く環境の違いも、「この企業を志望する理由」になります。以下の点に着目しましょう。

  • 業務範囲:上流工程(要件定義・設計)から携われるか、運用保守がメインか。
  • 研修制度:未経験者への教育体制や、資格取得支援制度の充実度。
  • 社風:技術研鑽を推奨する風土か、チームワークを重視するか、若手に裁量があるか。

企業理念やビジョン(MVV)への共感

企業の掲げるミッション、ビジョン、バリュー(MVV)への共感も重要な要素です。企業の目指す方向性と自分の実現したい未来が一致していることを伝えましょう。ただし、「理念に共感しました」と書くだけでは浅いため、自分のどの経験や価値観がその理念と重なるのかを具体的に説明することが大切です。

【ステップ④】IT業界で活かせる自分の強みを整理する

採用担当者が知りたいのは、あなたが「IT業界で活躍できる適性」を持っているかどうかです。ゼロから強みを考える必要はありません。以下のリストをご自身の経験と照らし合わせ、最も説得力を持って語れるポイントを見つけ出しましょう。

IT業界全体で共通して求められる人物像

「IT業界全体で共通して求められる人物像」というタイトルのスライドです。どの企業でも共通して求められる3つの資質として、「論理的思考力」「コミュニケーション能力」「継続的な学習意欲」が挙げられています。下部には成田さんのコメントがあり、企業によって重視される要素は異なるものの、上記の3点は共通して求められる資質であると解説されています。

IT業界では職種に関わらず、以下の3つの資質が共通して求められます。

  • 論理的思考力(ロジカルシンキング):物事を筋道立てて考え、矛盾なく説明する力。
  • コミュニケーション能力:顧客やチームメンバーの意図を正確に汲み取り、伝える力。
  • 継続的な学習意欲:新しい技術を自ら進んで学び続ける姿勢。

業種・職種ごとにアピールすべき強み

「業種・職種ごとにアピールすべき強み」というタイトルのスライドです。アピールすべき要素として、「課題発見力・解決力」「変化への対応力・スピード感」「正確性・責任感」「忍耐力・探究心」の4つが挙げられています。下部には具体例として、インフラエンジニアの場合はシステムダウンなどのミスを防ぎ、最後までやり遂げる力が求められるという成田さんのコメントがあります。

職種によって比重は異なりますが、以下の強みも評価されます。

  • 課題発見力・解決力:現状の問題点を分析し、改善策を実行して成果を出す力。(SIer・コンサル向け)
  • 変化への対応力・スピード感:状況に合わせて柔軟に対応し、素早くアウトプットする力。(Web業界向け)
  • 正確性・責任感:システムダウンなどのミスを防ぎ、最後までやり遂げる力。(インフラ・金融系向け)
  • 忍耐力・探究心:エラーの原因を粘り強く究明し、技術を深く追求する力。(エンジニア・研究開発向け)

求める人物像に合う強みとエピソードを探す

以下の問いかけを参考に、求められている強みやそれを裏付けるエピソードがあるかを確認してみましょう。

  • 論理的思考力
    • 感覚ではなく、事実やデータに基づいて課題の原因を分析した経験はあるか?
    • 複雑な物事を整理し、相手にわかりやすく順序立てて説明した経験はあるか?
  • コミュニケーション能力
    • 意見の異なるメンバーと協力し、共通の目標を達成するために調整した経験はあるか?
    • 相手の要望を聞き出し、期待以上の提案をした経験はあるか?
  • 継続的な学習意欲
    • 分からないことを放置せず、自分で調べて解決した経験はあるか?
    • 資格取得や新しいスキルの習得に向けて、計画的に努力を継続した経験はあるか?

【ステップ⑤】構成・書き方・注意点を押さえる

成田さんが人事として数多くのESを読んできた経験から言えることがあります。それは「優れた内容も、伝え方が悪ければ相手に届かない」ということです。ここでは、押さえるべき論理的で読みやすい構成と、採用担当者の心に響く表現テクニックをお伝えします。

志望動機の基本構成

「志望動機の構成とコツ」というタイトルのスライドです。左側には計400文字を想定した構成案として、結論、将来像、原体験、業界を選んだ理由、企業を選んだ理由、結論の強調という6つの流れとそれぞれの目安文字数が示されています。右側のコツという欄には、主体性の強調、志望につながる原体験の提示、企業固有の強みの理解という3点が記されています。

わかりやすい志望動機は、基本的に以下の順番で構成されています。この型を守ることで、話のブレを防ぎ、採用担当者に要点を的確に伝えることができます。

  • 書き出し(結論):「なぜ志望するのか」という結論を冒頭で一言で述べ、採用担当者に第一印象で理由を明確に伝えます。
  • 将来像(ビジョン):入社直後だけでなく、5年後などにどう成長していたいかというキャリアビジョンを語り、企業と共に未来を描く姿勢を示します。
  • 原体験(背景):その業界や企業に興味を持ったきっかけとなる具体的な過去の経験(エピソード)を述べ、志望理由に説得力と独自性を持たせます。
  • この業界を選んだ理由:業界全体の特徴や魅力を理解した上で、それが自身の価値観や経験とどう結びついているかを説明します。
  • この企業を選んだ理由:同業他社ではなく、その企業独自の強み(理念・事業・社風など)を挙げ、「なぜこの会社でなければならないか」を明確にします。
  • 締めくくり(結論の強調):自分の強みや経験を活かして、入社後に具体的にどのような形で貢献したいかを宣言し、熱意をアピールして結びます。

書き方のポイント

「受かる志望動機の書き方のポイント」というタイトルのスライドです。ピラミッド図を用いて基礎と応用が説明されており、基礎部分には結論ファースト、定量的に書く、求める人物像にマッチさせるという3点が配置されています。応用部分には、インパクトのある書き出しと締めくくり、他社にはない企業の強みに言及、原体験を具体的に述べるという3点が挙げられています。

読みやすく、かつ評価される文章にするためのテクニックを紹介します。これらを意識するだけで、文章の質がグッと向上します。

  • 求める人物像にマッチさせる:自分の強みや価値観を企業の理念や仕事内容と結びつけ、単なる熱意だけでなく「入社後に働いている姿」を具体的にイメージさせます。
  • 結論ファーストで書く:「なぜ志望するのか」という結論を冒頭で明確に伝え、採用担当者が続きを理解しやすい構成にします。
  • 定量的に書く:取り組みの成果や規模を具体的な数字(例:「20%向上」)で表すことで、説得力を高め、読み手との認識のズレを防ぎます。
  • 他社にはない企業の強みに言及する:企業研究に基づき、競合他社にはないその企業独自の特徴や魅力に触れることで、高い志望度を伝えます。
  • 原体験を具体的に述べる:無理に「その企業でなければならない理由」を作るのではなく、自身のライフヒストリー(過去の経験や価値観)に基づいた正直な理由を伝えます。
  • インパクトのある書き出しと締めくくりにする:書き出しで読み手の興味を惹きつけ、締めくくりで入社後の活躍を強く印象づけることで、評価を高めます。

やってはいけないNG例・注意点

「注意点・避けるべき表現」というタイトルのスライドです。避けるべき内容として5つの項目が挙げられており、1つ目は成長したいなどの受け身な姿勢、2つ目は「サービスが好き」だけで終わること、3つ目は「将来独立したい」と伝えること、4つ目はどの企業でも通用する抽象的な内容、5つ目は待遇面だけが理由であることです。

避けるべき表現を知ることで、マイナス評価を防ぐことができます。よくある失敗例とその改善策を確認しましょう。

  • 「成長したい」「学びたい」など受け身:受け身の姿勢はNG。「自ら学ぶ姿勢」を示した上で、制度をどう活かすかを伝えましょう。
  • 「サービスが好き」だけで終わる:ユーザー目線ではなく、「作り手」としてどう関わりたいかを書きましょう。
  • 「将来独立したい」と伝える:早期離職を懸念されます。その企業での長期的な貢献を前提にしましょう。
  • どの企業でも通用する抽象的な内容:社名を入れ替えれば他社でも通じる内容は避け、固有の要素を盛り込みましょう。
  • 待遇面だけが理由:給与やリモートワークなどの条件面を主軸にするのは避けましょう。

▼志望動機の構成・ポイント・注意点について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
エントリーシートの志望動機の構成と書き方!周りと差をつけるポイントを元日系大手人事が解説

【ステップ⑥】例文を参考にしながら書く

ここでは、IT業界の業種や職種別の志望動機例文を紹介します。成田さんが実際に添削してきた事例をもとに、ポイントも解説しています。これらをヒントに、自分だけのエピソードを盛り込んで作成してください。

【業種別】IT業界の志望動機例文

「【ステップ⑥】例文を参考にしながら書く」および「【業種別】IT業界の志望動機例文」というタイトルのスライドです。業種別の例文を参照するステップを示しており、下部には成田さんのアドバイスとして、業種別の特徴が捉えられていると志望理由の説得力がグンと増すことが説明されています。

インターネット・Web業界(BtoCサービス)の例文

<例文>
貴社が提供する「〇〇(サービス名)」を通じて、人々の生活を豊かにしたいと考え志望しました。私は大学時代、サークル活動の広報としてSNS運用を行い、情報発信によって集客を1.5倍に増やした経験があります。この経験から、Webサービスが持つ影響力の大きさを実感しました。貴社はユーザー目線でのサービス改善を徹底しており、その姿勢に強く共感しています。入社後は、ユーザーの潜在的なニーズを汲み取り、サービスの改善や新機能の提案に積極的に関わりたいと考えています。

<ポイント>

  • 原体験:SNS運用での成功体験を根拠にWebの影響力を語っている
  • 企業理解:ユーザー目線の徹底という企業の特徴に触れている
  • 貢献:ユーザーニーズを汲み取るという自身の強みを活かす姿勢を示している

情報処理サービス業界(SIer)の例文

<例文>
顧客の課題に寄り添い、IT技術で最適な解決策を提供したいと考え志望しました。カフェのアルバイトで、手書き伝票によるオーダーミスが多発していた際、タブレット注文の導入を店長に提案し、ミス削減と業務効率化を実現しました。この経験から、仕組みを変えることで課題を解決する面白さを知りました。貴社は金融業界のシステム構築に強みを持ち、社会インフラを支える責任ある仕事ができる点に魅力を感じています。私の提案力と粘り強さを活かし、顧客のビジネスを支えるエンジニアとして貢献したいです。

<ポイント>

  • 原体験:アルバイトでの業務改善エピソードで課題解決力を証明
  • 企業理解:金融業界への強みという具体的特徴に言及
  • 貢献:提案力と粘り強さというSIerに求められる資質をアピール

ソフトウェア業界の例文

<例文>
多くの企業の業務効率化を支えるパッケージソフトの開発に携わりたいと思い志望しました。ゼミ活動でデータ分析を行った際、既存のツールでは対応しきれない課題に直面し、簡易的なプログラムを自作して効率化した経験があります。貴社の製品「〇〇」は、汎用性が高く多くの企業で導入されており、その技術力の高さに惹かれました。入社後は、製品の機能追加や品質向上に取り組み、より多くのユーザーに価値を届けられるよう技術を磨いていきたいです。

<ポイント>

  • 原体験:自らツールを作って効率化した経験で技術への関心を示す
  • 企業理解:主力製品への言及で企業研究の深さをアピール
  • 貢献:製品の品質向上への意欲を示している

ハードウェア業界(IoT)の例文

<例文>
モノづくりを通じて、人々の生活を支える製品を世に送り出したいと考え志望しました。大学の研究でIoTデバイスを用いた見守りシステムの開発を行い、ハードウェアとソフトウェアが連携して動くことの重要性と面白さを学びました。貴社はIoT分野への投資を積極的に行っており、革新的な製品を生み出し続けている点に魅力を感じています。研究で培った組み込み技術の知識と、最後までやり遂げる忍耐力を活かし、貴社の開発チームに貢献したいです。

<ポイント>

  • 原体験:研究での開発経験を具体的に提示
  • 企業理解:IoT分野への注力という企業の方向性とマッチさせている
  • 貢献:専門知識と忍耐力という適性をアピール

通信業界(インフラ)の例文

<例文>
社会の当たり前を支える通信インフラを守り、発展させたいと考え志望しました。以前、災害ボランティアに参加した際、通信手段の重要性を痛感し、通信ネットワークを支える仕事に強い使命感を抱くようになりました。貴社は5Gなどの次世代通信技術の開発に注力しており、社会課題の解決に積極的な姿勢に共感しています。私の強みである「責任感」と「地道な努力を継続する力」を活かし、安定した通信環境の構築・運用に貢献したいと考えています。

<ポイント>

  • 原体験:災害ボランティアでの気づきから使命感をアピール
  • 企業理解:次世代技術への取り組みへの共感
  • 貢献:インフラエンジニアに不可欠な責任感と継続力を強調

【職種別】IT業界の志望動機例文

「【ステップ⑥】例文を参考にしながら書く」および「【職種別】IT業界の志望動機例文」というタイトルのスライドです。職種別の例文を参照するステップを示しており、下部には成田さんのアドバイスとして、職種のイメージがしっかりできている志望動機は、人事視点では入社意欲が高いように見えると記載されています。

エンジニア職(SE)の例文

<例文>
技術力を武器に、顧客の課題解決を実現するシステムエンジニアになりたいと考え志望しました。大学では情報工学を専攻し、チームでのアプリ開発を経験しました。その際、メンバーと意見が対立することもありましたが、互いの意図を汲み取り調整することで、より良いものを作り上げることができました。貴社の、チームワークを重視し顧客と共にシステムを作り上げる姿勢に惹かれています。技術力だけでなく、調整力を活かしてプロジェクトの成功に貢献したいです。

<ポイント>

  • 原体験:チーム開発での調整経験を提示
  • 貢献:技術力に加え、SEに必須のコミュニケーション・調整力をアピール

営業・コンサルタント職の例文

<例文>
顧客の潜在的な課題を引き出し、ITの力で解決策を提案するコンサルタントとして活躍したいです。塾講師のアルバイトでは、生徒の成績が伸び悩む原因を分析し、個別の学習プランを提案することで志望校合格をサポートしました。この経験から、相手のために考え抜くことにやりがいを感じています。貴社の顧客伴走型のコンサルティングスタイルに共感し、私の課題発見力と提案力を活かして、顧客企業の成長を支援したいと考えています。

<ポイント>

  • 原体験:塾講師での個別提案・課題解決のエピソード
  • 貢献:課題発見力と提案力というコンサルタントの適性をアピール

マネジメント・その他(社内SE)の例文

<例文>
社内システムの最適化を通じて、社員が働きやすい環境を作りたいと考え、社内SEを志望しました。サークル活動では会計係として、集金管理の煩雑さを解消するためにスプレッドシートを活用した管理ツールを作成し、作業時間を半減させました。この経験から、ITによる業務改善の重要性を実感しました。貴社はDX推進に力を入れており、私の強みである「現場目線での改善提案力」を活かして、組織全体の生産性向上に貢献したいです。

<ポイント>

  • 原体験:自身の工夫による業務改善の実績
  • 貢献:現場目線を持ち、組織貢献する意欲を示している

【状況別】IT業界の志望動機例文

文系・未経験からエンジニア志望の例文

<例文>
IT技術を用いて、より便利な社会システムを構築したいと考え志望しました。文系出身ですが、ゼミでの統計分析を通じてデータを扱う面白さに触れ、プログラミングスクールに通いPythonの学習を始めました。学習の中で、エラーを解決した時の達成感や、論理的に処理を組み立てる過程に適性を感じています。貴社の充実した研修制度と挑戦を応援する風土のもと、持ち前の学習意欲を活かして早期に技術を習得し、一人前のエンジニアとして貢献したいです。

<ポイント>

  • 学習姿勢:スクール通学や独学のアピールで本気度を示す
  • 適性:文系ならではの経験(統計など)からITへの興味を接続
  • 貢献:早期習得への意欲をアピール

理系・情報系学部出身の例文

<例文>
大学で学んだ画像処理技術を活かし、社会の安全を守るシステム開発に携わりたいです。研究室では、防犯カメラ映像から不審な動きを検知するAIモデルの構築に取り組みました。この研究を通じて培った、仮説検証を繰り返して精度を高める粘り強さは、貴社の品質へのこだわりと通じると考えています。貴社のセキュリティソリューション事業において、私の専門知識と探究心を活かし、より高度なシステムの開発に挑戦したいです。

<ポイント>

  • 専門性:研究内容と企業の事業内容をリンクさせている
  • 強み:研究で培ったプロセス(仮説検証・粘り強さ)をアピール
  • 貢献:即戦力としての期待を持たせる内容

経験者(アルバイト・インターン経験あり)の例文

<例文>
より大規模なシステム開発に挑戦し、多くのユーザーに影響を与えたいと考え志望しました。長期インターンでは、Webベンチャー企業でPHPを用いたECサイトの機能追加を担当しました。社員の方とコードレビューをし合いながら、可読性の高いコードを書く重要性を学びました。貴社の大規模トラフィックを支える技術力と開発体制に魅力を感じています。インターンで培った実務経験とチーム開発のノウハウを活かし、貴社のサービスの安定稼働と成長に貢献したいです。

<ポイント>

  • 実績:長期インターンでの具体的な業務内容と学びを提示
  • 意欲:大規模開発への挑戦というキャリアアップの意図を明確化
  • 貢献:実務経験に基づく即戦力性をアピール

【ステップ⑦】就活のプロに添削してもらう

成田さんが実際に人事として選考を行う中で感じたのは、添削を経た志望動機とそうでないものには明確な差があるということです。志望動機の完成度を高める最終工程として、第三者によるチェックは不可欠です。

なぜ第三者の添削が必要か

第三者に読んでもらうことで、自分では気づかない誤字脱字や表現の曖昧さを発見できます。また、自分の中では伝わっているつもりでも、他者には理解しづらい部分があるかもしれません。客観的な視点でのフィードバックにより、より完成度の高い志望動機に仕上げられます。

添削を受ける際のポイント

添削を依頼する相手としては、特に就活エージェントがおすすめです。多くの学生の志望動機を見てきた経験から、企業目線での具体的なアドバイスを得られます。

添削時にチェックしてもらうべきポイントは以下の通りです。

  • 論理的な構成になっているか
  • 誤字脱字がないか
  • 敬語の使い方が正しいか(特に「御社」と「貴社」の使い分け)
  • 結論ファーストになっているか
  • 抽象的な表現が多くないか

これらの観点で具体的な改善案をもらうことで、説得力のある志望動機に仕上げられます。

就活エージェントを活用するメリット

就活エージェントを活用すると、志望動機の添削だけでなく、業界や企業に関する専門的なアドバイスを受けられます。多くの学生を見てきた経験から、効果的な表現方法や改善ポイントを具体的に教えてもらえますので、積極的に活用しましょう。

よくある質問・FAQ

就活のサポーターとしてよく聞かれる質問や、en-courage利用者へのインタビューで出てきた疑問への回答をご紹介します。

プログラミング未経験でもエンジニアになれる?

なれます。多くのIT企業が未経験者向けの研修制度を整えており、ポテンシャル採用を行っています。ただし、待っているだけでは採用されません。「なぜエンジニアになりたいか」という明確な理由と、自ら学習し続ける意欲を示すことが重要です。不安な場合は就活エージェントに相談し、未経験採用に積極的な企業や、充実した研修制度を持つ企業を紹介してもらうのが近道です。

志望動機の文字数はどのくらいが適切?

指定がない場合、エントリーシートでは300〜400文字程度が一般的です。これは、1分程度で読める分量であり、結論・理由・具体例・結びをバランスよく盛り込める長さです。もし適切な分量や構成に迷うようなら、就活エージェントに添削を依頼することをお勧めします。プロの視点から、限られた文字数で最大限にアピールするための具体的なアドバイスが得られます。

文系がIT業界を志望する場合の不利な点は?

技術的な知識量では理系に劣る場合がありますが、必ずしも不利ではありません。ITの現場では、顧客との折衝やチームでの協力など、コミュニケーション能力が非常に重要視されます。文系ならではの「伝える力」や「読み解く力」は大きな武器になります。自分の強みをどうIT業界で活かせるか分からない場合は、就活エージェントに相談してみてください。

持っておくと有利な資格は?(ITパスポート・基本情報技術者など)

必須ではありませんが、持っていると意欲のアピールになります。文系・未経験なら「ITパスポート」で基礎知識があることを示せます。さらに「基本情報技術者試験」を持っていれば、エンジニアとしての基礎力が証明され、大きな加点要素となります。どの資格を取得すべきか迷った場合は、就活エージェントに相談し、自分にとって最適なアピール方法を確認すると良いでしょう。

ポートフォリオ(成果物)は必要?

WebデザイナーやWebエンジニアを目指す場合、ポートフォリオがあると非常に有利です。未経験でも、独学で作ったWebサイトやアプリがあれば、技術力だけでなく「モノづくりへの情熱」や「行動力」を強力にアピールできます。ポートフォリオの作成方法や、提出の要否については企業によって異なるため、就活エージェントを通じて志望企業の傾向を確認し、対策を練ることを推奨します。


監修:成田 駿

元日系大手人事/就活サポーター

日系大手事業会社で最年少部長に就任し、新卒採用に5年以上従事。戦略設計からイベント企画、選考フロー、研修まで新卒採用の入口から出口までを幅広く担当し、延べ3,000名以上の学生と接点を持つ。人事業務以外でも累計2,000名以上の就活生を個別に支援し、大手・外資・メガベンチャーなど多様な企業への内定実績を誇る。

協力:NPO法人en-courage

全国約120の大学に支部を展開し、就活生を対象としたキャリア教育支援を行うNPO法人。独自にイベントやメディアを多数運営し、年間2,500件以上のセミナーを開催。企業と学生の間に年間約80万回の接点を創出するなど、国内最大級の規模で活動している。すべての就活生が本質的なキャリアを通じて人生を最大化できるよう、個別支援やコミュニティづくりを通じたサポートを目指している。