公開日:
最終更新日:

自己分析を深める11のやり方|目的・注意点・活用方法まで完全ガイド

就職活動における自己分析の進め方に悩んでいませんか?この記事では、自己分析の目的といった基本から、自分史やモチベーショングラフ作成などの具体的な11のやり方、さらにはエントリーシート(ES)での効果的な活用法まで、例文を交えて網羅的に解説します。自分に合った企業を見つけ、選考を突破するための羅針盤として、ぜひご活用ください。

就職活動を進める中で、「自己分析って何から始めればいいの?」「自分の強みがわからない」といった悩みを抱えていませんか。自己分析は、自分に合ったキャリアを見つけるための羅針盤であり、就職活動を成功させるための重要な第一歩です。

本記事では、日系大手企業の元人事で、現在en-courageで就活サポーターを務める成田さんによる「選考を突破するための自己分析」を徹底解説。さらに、en-courage利用者へのインタビューを基に、多くの就活生が悩むポイントを紐解き、明日から実践できる11の具体的なやり方から、自己分析を活かしたエントリーシートの書き方まで網羅的に解説します。

自己分析とは

自己分析とは、自分の長所や短所、価値観などを深く理解し、言語化する作業です。就職活動において、自分に合った企業を見つけたり、エントリーシートや面接で自分を効果的にアピールしたりするための基礎となります。自己理解を深めることで、キャリア選択の軸が定まり、説得力のある自己PRが可能になります。

自己分析の目的

自己分析の主な目的は、大きく分けて2つあります。

  • 企業選びの軸を定める:自分の価値観や興味を明確にし、数多くの企業の中から自分に合った一社を選ぶための判断基準を作ります。就職後のミスマッチを防ぎ、自分らしく働ける環境を見つけることに繋がります。
  • 選考を突破する:自己理解に基づき、エントリーシートや面接で自分らしさを具体的に伝えられるようになります。入社後のキャリアプランも明確に語れるようになり、採用担当者に対して入社意欲の高さや将来性をアピールできます。

自己分析のメリット

key_points_01.jpg

自己分析には、就職活動を有利に進めるためのいくつかのメリットがあります。

  • 自分に合った企業が見つかる:自分の価値観や興味、得意なことが明確になることで、どのような仕事や環境でやりがいを感じられるのかを把握でき、効率的に企業選びを進められます。
  • 選考での説得力が増す:自分の強みや経験を深く掘り下げておくことで、エントリーシートや面接において、単なる長所だけでなく、具体的なエピソードを交えて説得力のあるアピールが可能になります。
  • 入社後のキャリアプランが描きやすくなる:自分の目標が明確になっていれば、将来どのようなキャリアを築きたいかというビジョンを描きやすくなり、キャリアの岐路に立った際の道しるべにもなります。

自己分析はいつまでにやるべき?

自己分析に明確な期限はありませんが、早めに始めることで余裕を持った就職活動ができます。

  • 開始時期の目安:一般的には、大学3年生の4月頃から始めると、余裕を持って準備を進められるでしょう。早く始めれば、その分だけ他の対策に時間を充てることができます。
  • 一度で終わらせないことが重要:自己分析は一度きりで終わらせるものではありません。説明会や面接を重ねる中で考え方が変わることは自然なことです。就職活動中や内定後も定期的に見直し、その都度得た新しい視点や考えを整理していくことで、より自分にマッチした企業選びが可能になります。

自己分析のやり方

structure_and_tips_04.jpg

ここからは、自己分析の具体的なやり方を11個ご紹介します。元人事である成田さんが特に重要だと語る手法や、en-courageのインタビューで先輩たちが「内定につながった」と話す方法を厳選しました。まずは自分に合ったものから試してみてください。

1. 就活エージェントに相談する

自己分析は、一人で行うには時間がかかったり、他者の協力が必要だったりと、難しく感じることもあるでしょう。そんな時は、第三者の視点を取り入れることで、より効率的で質の高い自己分析が可能になります。

特に就活エージェントは、キャリア相談のプロフェッショナルです。多くの学生を支援してきた経験から、あなたの話の中から強みや価値観を引き出し、言語化する手助けをしてくれます。さらに、企業が求める人材像を熟知しているため、自己分析の結果をどうアピールすれば効果的か、具体的なアドバイスも得られます。一人で悩まず、専門家の力を借りることも有効な手段です。

2. 自分史を作成する

1-2.jpg

「自分史」とは、これまでの人生を振り返り、印象的な出来事を時系列でまとめる手法です。過去の経験を客観的に見つめ直すことで、自分の強みや弱み、大切にしている価値観を深く理解できます。これにより、自己PRや志望動機に具体的なエピソードに基づいた厚みと説得力を持たせられます。

作成する際は、成功体験だけでなく、失敗や挫折といった経験も正直に書き出すことがポイントです。それぞれの出来事について「なぜ取り組んだのか」「何を感じたのか」を深掘りすることで、自分の行動原理や思考の癖が見えてきます。

3. モチベーショングラフを作成する

自己分析で使う「モチベーショングラフ」の記入例。横軸を時間、縦軸をモチベーションの上下として、人生の出来事とそれに伴う感情の浮き沈みを折れ線グラフで表現している。グラフの山と谷には「テニスを習い始める」「第一志望の大学に落ちる」などの具体的な出来事が記載されている。

「モチベーショングラフ」は、横軸に時間、縦軸にモチベーションの高低を設定し、人生における感情の浮き沈みを可視化する手法です。このグラフを作成すると、自分がどのような出来事に喜びややりがいを感じ、逆にどのような状況で意欲が低下するのかを視覚的に把握できます。

モチベーションが上がった出来事の共通点を探ることで、自分の強みや興味の方向性が見えてきます。各ポイントで「なぜ楽しかったのか」「なぜつらかったのか」を言語化することで、自分なりの価値観が明確になり、将来どのような仕事や環境で働きたいかを考える重要な指針になります。

4. マインドマップを作成する

自己分析で使う「マインドマップ」の作成例。「就活自己分析」を中心に置き、「好きなこと・得意なこと」「経験」「価値観・性格」「キャリア・将来像」「弱み・課題」といった項目を枝分かれさせ、さらに具体的な要素へと展開させて思考を整理している。

「マインドマップ」は、中心にテーマを置き、関連する言葉やイメージを放射線状に広げて思考を可視化するツールです。自己分析では、中央に「自分」と設定し、「好きなこと」「得意なこと」「価値観」といった項目を枝分かれさせ、連想される言葉を自由に書き出していきます。

マインドマップの利点は、頭の中にある抽象的な考えを具体的に整理できる点です。関連する情報をつなげることで、これまで気づかなかった自分の新たな側面や価値観を発見できます。視覚的に情報を整理するため記憶に残りやすく、自己PRやガクチカの骨子作りにも役立ちます。

5. 「なぜ?」を繰り返して深掘りする

自己分析の手法「『なぜ?』を繰り返す」(なぜなぜ分析)の解説スライド。「高校時代、バスケ部でチームワークの強化に取り組んだ結果、県大会3位に入賞」というエピソードを起点に、「なぜ?」を4回繰り返して深掘りし、最後のキーワードとして「チームワーク」「コミュニケーション」「観察」「個人の尊重」「マネジメント」を導き出している。

印象に残っている経験や決断に対し、「なぜ?」という問いを繰り返し、自分の行動の根本的な理由を掘り下げる手法です。この問いを5回ほど繰り返すことで、表面的な理由の奥にある、自分の行動原理や根源的な価値観にたどり着けます。

例えば、「サークルのリーダーを務めたのはなぜ?」という問いから始め、「まとめ役を頼まれることが多いのはなぜ?」→「皆の意見を聞くのが得意なのはなぜ?」と掘り下げることで、「多様な意見を尊重し、目標達成に導くことにやりがいを感じる」といった本質的な動機に気づけます。この価値観を軸に経験を語ることで、自己PRに深みと説得力をもたらします。

6. Will・Can・Mustで考える

自己分析フレームワーク「WILL / CAN / MUST」の概念図。「やりたいこと(WILL)」「できること(CAN)」「やるべきこと(MUST)」の3つの円が重なったベン図。3つの円が全て重なる中央部分が「自分の能力を活かし高い意欲と満足感を得ながら働ける理想的な仕事」であると示している。

「Will・Can・Must」は、キャリアプランニングに有効なフレームワークです。「Will(やりたいこと)」「Can(できること)」「Must(やるべきこと)」の3要素を洗い出し、それらが重なる領域から自分に最適な仕事を見つけます。

  • Will:将来実現したいこと、挑戦したいこと(例:グローバルな環境で働く)
  • Can:現在持っているスキルや強み(例:語学力、課題解決能力)
  • Must:企業や社会から求められる役割(例:チームの目標達成への貢献)

この3つの円が重なる部分は、自分の能力を活かし、高い意欲と満足感を得ながら働ける理想的な仕事を示唆します。まずはCanを書き出し、そこからWillを考え、企業研究を通じてMustを明確にしていくと、現実的なキャリアプランを描きやすくなります。

7. 強み・弱みを書き出す

自己分析で「強み・弱みを書き出す」方法を解説するスライド。ステップ1として、中高校、大学時代の成功/失敗体験を一覧表にする方法を提示。ステップ2として、そこから見つけた強みを、受ける企業とマッチさせることの重要性を説いている。また、「弱みは裏返すと強みになる」という考え方も紹介されている。

自分の「強み」と「弱み」を書き出し、それぞれに「根拠となるエピソード」を添える手法です。例えば「強み:計画性」に対し、「文化祭の企画で詳細なスケジュールを作成し、成功に導いた」経験を結びつけます。さらに、その強みを仕事で「どう活かすか」、弱みと「どう向き合うか」まで言語化します。

弱みは「慎重すぎる」を「リスク管理能力が高い」と捉え直すなど、多角的に分析することが可能です。これにより、自己PRに深みと説得力を持たせることができます。

▼強みの見つけ方は、以下の記事でもご紹介しています。
自分の「強み・長所」がない就活生に!「強み」の見つけ方と答え方

8. 他己分析を行う

自己分析の手法「他己分析」を解説するスライド。「自分の特性を他者に聞いてみる」と題し、両親や友人に自分の長所や短所について質問したり、アンケートシートを利用したりする方法を紹介している。質問の具体例も記載されている。

「他己分析」とは、友人や家族、大学の教授など、身近な人に自分について尋ね、客観的な視点から自己理解を深める手法です。自分一人では気づきにくい、他者の目に映るあなたの長所や短所、印象を知ることができます。他己分析の大きなメリットは、自己評価と他者評価のギャップを認識できる点です。

例えば、自分では「慎重な性格」だと思っていても、周りからは「思慮深いリーダータイプ」と見られているかもしれません。こうした客観的な視点は、新たな強みを発見するきっかけとなり、エントリーシートや面接で語るエピソードの説得力を高める貴重な材料となるでしょう。

▼他己分析のやり方の詳細は、以下の記事でご覧いただけます。
他己分析のやり方とは?友達と一緒に就活対策をしよう!

9. ジョハリの窓を活用する

自己分析フレームワーク「ジョハリの窓」の解説図。「自分は知っている/知らない」と「他人は知っている/知らない」の2軸で自分を4つの領域に分類している。「開放の窓」「盲点の窓」「秘密の窓」「未知の窓」の4つの窓について、それぞれどのような自己を指すのかが説明されている。

「ジョハリの窓」は、「自分から見た自分」と「他人から見た自分」の認識を4つの領域に分類し、自己理解を深めるフレームワークです。

  • 開放の窓:自分も他人も知っている自分(自己PRの核)
  • 秘密の窓:自分は知っているが他人は知らない自分(アピールにより魅力を伝えられる部分)
  • 盲点の窓:自分は気づいていないが他人は知っている自分(他己分析で発見できる新たな強み)
  • 未知の窓:誰からもまだ知られていない自分(今後の可能性)

このフレームワークで自己評価と他者評価のズレを把握できます。特に「盲点の窓」を知ることは、自分では気づかなかった強みを発見する絶好の機会です。他己分析の結果を当てはめて分析することで、自己PRの幅を広げ、より多角的な自己紹介が可能になります。

10. 企業分析/比較シートを作成する

9-2.jpg

自己分析で自身の強みや価値観を理解したら、それが企業の求める人物像や文化と合致するかを見極めることが重要です。そのために「企業分析/比較シート」を作成しましょう。

まず、興味のある企業を「People(人・風土)」「Profession(仕事・事業)」「Philosophy(理念・目標)」「Privilege(制度・待遇)」の4つの観点で分析します。次に、それぞれの情報に対して、自分が「合う」か「合わない」かを判断し、その理由を書き出します。

この作業を複数の企業で行い比較することで、自分が企業選びで何を重視しているのか、共通する「自分軸」が明確になります。自己分析と企業研究を掛け合わせ、入社後のミスマッチを防ぎましょう。

▼以下の記事では、企業分析について解説しています。
企業分析で見るべき項目とは?現役人事が語る

11. 自己分析ツールを活用する

自己分析に行き詰まったり、手軽に始めたいと考えたりしている方には、Web上で利用できる診断ツールがおすすめです。いくつかの質問に答えるだけで、自分の性格や強み、向いている仕事の傾向などを客観的に示してくれます。これらのツールは、自分では気づかなかった新たな視点を提供してくれるため、自己理解を深めるきっかけとして役立ちます。

ただし、結果を鵜呑みにせず、あくまで自己分析を深める一つの材料として捉え、自身の経験と照らし合わせて考えることが大切です。

▼以下の記事では、自己分析ツールについて選び方やツール一覧など詳細に解説しています。
【2025年最新版】おすすめ自己分析ツール24選!選び方から活用法まで徹底解説

自己分析を行う際の注意点

key_cautions_01.jpg

せっかく時間をかけて自己分析をしても、そのやり方や考え方を間違えると、かえって就活の軸がぶれてしまうことも。ここでは、成田さんが「これだけは守ってほしい」と語るポイントや、en-courageのインタビューで先輩たちが失敗談として挙げていた注意点をご紹介します。これらを押さえることで、より効果的に自己分析を進められます。

目的を明確にする

まず、「何のために自己分析をするのか」というゴールを設定しましょう。例えば、「自分に合う企業を見つけるため」「説得力のある志望動機を作るため」といった目的が考えられます。目的がはっきりしていれば、分析が脱線することなく、就職活動に直結する有益な情報や気づきを得やすくなります。

ありのままの自分と向き合う

企業の求める人物像に自分を無理に合わせようとするのはやめましょう。長所だけでなく、自分の短所や失敗経験からも目をそらさずに分析することが重要です。正直に自分を理解することで、入社後のミスマッチを防ぎ、本当に自分らしく働ける場所を見つけることができます。

結果をそのままアウトプットにしない

自己分析でわかった自分の強みや価値観は、いわば「素材」です。これをそのまま「私の強みは〇〇です」と伝えるだけでは説得力がありません。「なぜそれが強みと言えるのか」を具体的なエピソードで裏付け、「入社後どのように活かせるか」まで繋げることで、初めて採用担当者に響くアピールになります。

一度きりで終わらせない

自己分析は一度で終わりではありません。説明会への参加や面接を経験する中で、あなたの考え方や価値観は変化していきます。その変化に合わせて自己分析の結果も更新していくことが大切です。定期的な見直しを行うことで、常に一貫性があり、深みのある自己アピールが可能になります。

【例文あり】自己分析をESで活用する方法

自己分析で得た「自分の強み」や「価値観」を、どうすれば採用担当者に響く言葉で伝えられるのでしょうか。en-courageの就活サポーターとして日々多くのESに目を通す成田さんは、「少し視点を変えるだけで、ESは格段に良くなる」と語ります。

ここでは、成田さんが利用者との面談で「落ちそうなES」を「受かるES」へと生まれ変わらせた添削のプロセスを再現。志望動機から自己PRまで、あなたのESをレベルアップさせる秘訣を解説します。

志望動機の作成に活用する

落ちる例文
私が5-10年後になりたい姿は、ITの専門性と幅広い知見を併せ持つT字型人材です。高専と大学で情報工学を学び、特にIoTや光通信の知識を深めてきました。この専門性を縦軸とし、IT全般やアントレプレナーシップの知識を横軸として広げ、強みのあるビジネスパーソンとして活躍したいです。戦略コンサルティングを手掛ける貴社には、顧客との「対話力」に優れた方が多いと考えており、その環境で自身を成長させたいです。

受かる例文
幼少期に読んだ発明家の図鑑がきっかけで、「人々の困難を乗り越え、より良い社会を築く」という想いを強く抱くようになりました。この想いを実現するため、ITの専門性と幅広い知見を併せ持つT字型人材になることを目指しています。数あるコンサルティングファームの中でも貴社を志望するのは、「結果主義」を徹底し、クライアントと深く対話し、実行可能な戦略を共に創り上げる姿勢に強く共感したからです。貴社の環境でこそ、私の強みである「課題の本質を追求する力」を活かし、真に価値ある変革を生み出せると確信しています。

受かるポイント

  • 原体験との接続:自己分析で深掘りした「なぜT字型人材になりたいのか」という動機を、幼少期の原体験と結びつけて具体的に示している。
  • 企業理念との接続:自分の価値観と企業の「結果主義」という理念が合致する点を明確にし、「この会社でなければならない理由」を論理的に説明している。
  • 強みの再現性:自己分析で見つけた「課題の本質を追求する力」が、入社後にどう貢献できるかを具体的に示し、活躍イメージを持たせている。

自己PRの作成に活用する

落ちる例文
私の強みは、チームや企画を輝かせるために施策を提案し行動できる点です。サークルの新歓統括として体験型イベントを企画し、昨年の倍以上の新入生を獲得しました。運営ではメンバーの特性を考えてチーム分けを行い、全員が役割を持てるようにしました。その結果、イベントに参加した新入生の9割が入会し、「メンバーの個性に魅力を感じた」という声ももらいました。この経験から、チームの個性を生かす施策を提案できるのが私の強みです。

受かる例文
私は、一人ひとりの個性が尊重され、輝ける環境を作ることに情熱を燃やす人間です。この強みは、サークルの新歓統括を務めた際に発揮されました。前年の課題は、一部のメンバーに負担が偏り、新入生にもその雰囲気が伝わっていたことでした。そこで私は、全員が主役になれるよう、メンバー一人ひとりと面談し、それぞれの得意なことや希望をヒアリング。その上で体験型イベントを企画し、個々の特性に合わせた役割を割り振りました。結果、メンバーの主体性が高まり、その活気が新入生にも伝わって昨年の倍以上の入会に繋がりました。「メンバーの個性が魅力的だった」という声が何よりの喜びでした。この「多様な個性を束ね、相乗効果を生み出す力」を活かし、貴社でも新たな価値創造に貢献したいです。

受かるポイント

  • 価値観の明確化:自己分析に基づき、「なぜその行動をとったのか」という動機(一人ひとりの個性を尊重したい)を冒頭で明確にしている。
  • 思考プロセスの提示:課題に対して自分がどう考え(全員が主役になれるように)、どう行動したか(面談でヒアリング)というプロセスを具体的に記述している。
  • 強みの具体化:行動と結果から、「多様な個性を束ね、相乗効果を生み出す力」という、より魅力的で再現性のある強みとして言語化している。

ガクチカの作成に活用する

落ちる例文
私は水泳指導のアルバイトに注力しました。担当する約120名の生徒により良い指導を提供することを目標とし、特に幼い子への指導方法を改善しました。泣いてしまう子への知識が不足していたため、親御さんへのヒアリングを通じて水泳を楽しめる環境作りに努めました。また、上級者には練習法を研究し、指導の質を改善しました。結果、顧客満足度が向上し、私のクラスを希望する生徒が増えました。この経験から、新たな視点の模索と成長の重要性を学びました。

受かる例文
水泳指導のアルバイトで、「水が怖い」と泣いてしまう初心者の子どもたちを笑顔にすることに挑戦しました。当初、私の指導では一向に水に慣れてもらえず、大きな壁にぶつかりました。課題は、私が「泳ぎ方を教える」ことばかりに固執し、子どもの「不安な気持ち」に寄り添えていなかった点にあると分析。そこで、指導方針を180度転換し、まずは水に触れる楽しさを伝えることから始めました。一人ひとりの保護者に好きなキャラクターやおもちゃをヒアリングし、それらを使った水遊びを徹底的に実践。子どもが少しでも水に顔をつけられたら、皆でハイタッチをして喜びを分かち合いました。結果、担当した初心者クラス全員が学期末には笑顔で水に潜れるようになり、「水泳が大好きになった」という手紙をもらった時は、最高の達成感を感じました。この経験から、相手の立場に立って課題の本質を捉え、粘り強く解決策を実行する力を学びました。

受かるポイント

  • テーマの絞り込み:自己分析に基づき、最も情熱を注いだ「水が怖い子どもを笑顔にする」という一点にテーマを絞り、ストーリーに深みを持たせている。
  • 課題設定と分析の具体性:直面した壁(子どもが水に慣れない)と、その原因分析(自分の指導への固執)を具体的に示すことで、課題解決能力をアピールしている。
  • 学びの言語化:「成長の重要性」といった漠然とした学びではなく、「相手の立場に立って課題の本質を捉え、粘り強く解決策を実行する力」という、企業で活かせる具体的なスキルとして示している。

強み・弱みの作成に活用する

落ちる例文
私の強みは、目標達成に向けた強い向上心です。カフェのアルバイトでは、売上向上を目指して新商品の提案やおすすめトークの工夫を行い、お客様に喜ばれるサービスづくりに力を入れました。特に、自主的にラテアートを習得し、店の看板メニューにまで育て上げました。決めた目標に対しては、妥協せず努力を続けられる点が私の強みです。
一方で、周囲の意見を聞かず頑固になってしまうことが弱みです。新人教育を任された際、自分のやり方を押し通し、他のスタッフの助言を受け入れなかった結果、チームの雰囲気を悪くしてしまいました。現在は、他者の意見を積極的に取り入れ、柔軟な姿勢で物事を進めるよう意識しています。

受かる例文
私の強みは「より良い状態を徹底的に追求する向上心」です。カフェのアルバイトでは、お客様にとって最高のサービスを考え、個人の技術としてラテアートを磨くだけでなく、スタッフ全員で新商品のアイデアを出し合う会を企画し、チーム全体の品質向上を主導しました。常に「もっと良くするには?」と考え、個人と組織の両面から改善に取り組めます。
この強みは時に「完璧を求めすぎて一人で抱え込む」という弱みとして現れます。新メニュー開発を担当した際、理想を追いすぎて他の意見を聞かず、結果として提供が遅れ、お客様をお待たせしてしまいました。この経験から、真のより良い状態とは、個人の理想よりもチーム全体で価値を届けることだと気づきました。以後は周囲の意見を尊重し、協働を通じて成果を高める姿勢を大切にしています。

受かるポイント

  • 一貫性の提示:自己分析を通じて、「より良い状態を追求する」という価値観が、強み(向上心)と弱み(完璧を求めすぎる傾向)の両面に通じており、思考と行動の一貫性を示している。
  • 弱みのポジティブ転換:弱みを隠さずに描きつつ、失敗から学び、周囲と協働する姿勢へとつなげており、成長意欲と誠実さが伝わる。
  • 実践的な成長の提示:学びを具体的な行動(意見を取り入れる・チームで最適解を探す)として示し、入社後も自ら課題に向き合い成長を続けられる人物像を印象づけている。

自己分析に関するよくある質問

就活のサポーターとしてよく聞かれる質問や、en-courage利用者へのインタビューで出てきた疑問への回答をご紹介します。

自己分析ノートの作り方は?

自己分析ノートに決まった形式はありません。大学ノートやアプリなど、自分が使いやすいものを選びましょう。重要なのは、単なる出来事を記録するだけでなく、「事実(出来事)」と、その時の「感情・思考」をセットで書き出すことです。

具体的には、まず過去の経験を時系列で書き出し、それぞれの経験について、「なぜ取り組んだのか」「何が大変だったか」「どう乗り越えたか」「何を学んだか」を深掘りし、自分の感情や考えを言語化していきます。これにより、自分の行動原理や価値観が可視化され、強みや弱みを客観的に把握しやすくなります。

もし、書き出した内容をどう解釈し、効果的なアピールポイントに繋げれば良いか分からなくなった場合は、就活エージェントに相談するのも有効です。プロの視点で内容を整理し、あなたの強みを言語化する手助けをしてくれるでしょう。

自己分析は一度やれば終わり?

いいえ、自己分析は一度で完結するものではありません。就職活動を進める中で、様々な企業や人に出会い、新たな経験を積むことで、あなたの価値観や興味は変化していきます。選考の初期段階で行った自己分析の結果が、数ヶ月後にはしっくりこなくなるのは自然なことです。

説明会や面接を経て考え方が変わったなら、それは自己理解が深まっている証拠です。定期的に自己分析を見直し、その時々の自分の考えや感情をアップデートしていくことで、企業選びの軸がより明確になり、一貫性のあるアピールができるようになります。

自分の考えがどう変化し、それがどの企業に合っているのかを一人で判断するのが難しいと感じたら、就活エージェントに壁打ちを頼むのがおすすめです。客観的な対話を通じて、思考の変化を整理し、キャリアの軸を再設定するサポートをしてくれます。

自己分析に行き詰まったらどうすればいい?

自己分析に行き詰まったら、一人で抱え込まずに他者の視点を取り入れることが最も効果的な解決策です。友人や家族に協力してもらう「他己分析」は、自分では気づかなかった客観的な強みや特徴を発見する良い機会になります。

それでも解決しない場合は、大学のキャリアセンターや就活エージェントといった就職支援のプロに相談することをおすすめします。特に就活エージェントは、多くの学生と対話する中で、自己分析を深めるための的確な質問を投げかけてくれます。客観的な問いかけに答えていくうちに、自分の中の漠然としていた考えや価値観が言語化され、整理されていくでしょう。


成田 駿

元日系大手人事/就活サポーター

日系大手事業会社で最年少部長に就任し、新卒採用に5年以上従事。戦略設計からイベント企画、選考フロー、研修まで新卒採用の入口から出口までを幅広く担当し、延べ3,000名以上の学生と接点を持つ。人事業務以外でも累計2,000名以上の就活生を個別に支援し、大手・外資・メガベンチャーなど多様な企業への内定実績を誇る。

協力:NPO法人en-courage

en-courage(エンカレッジ)は、就活生のキャリア形成を支援する日本最大級のNPO法人です。全国約120大学に支部を展開し、約2,000名のメンターが在籍しています。メンターは就活を終えたばかりの一つ上の先輩で、週次の面談を通じて担当する就活生のキャリア支援を行っています。 常に最新かつリアルな就活情報を収集できるため、学生の視点に立った信頼性の高いキャリア情報や実践的な就職活動ノウハウを発信できます。