近年変動の激しい飲料業界。注目すべきはサントリー?
飲料業界を代表する会社といえば、サントリー、アサヒ、キリンのいわゆる飲料三大大手です。これらの企業は、就職活動においても非常に人気が高いですね。
これらの企業は、日本を代表する大手企業であり、安定した業績を残す優良企業です。しかし、少子化による日本国内の需要の落ち込みなど、徐々に飲料業界の市場環境は厳しくなっています。そんな中、各社が生き残りをかけて様々な戦略を取り、その勢力図にも大きな変動が起こっている業界なのです。
当記事では、そんな飲料業界の変化について分析していきたいと思います。中でも特に、サントリーは注目すべき会社と言えます。
サントリーは、ビール事業で長年赤字を計上するといった不振もあり、業界2位に甘んじていました。しかしこの数年間で大幅に売り上げを伸ばし、ついには業界首位を獲得する企業となりました。それはいったいどうしてなのでしょうか。
本記事では、主に飲料業界の主要プレイヤーである各飲料会社の業績を比較、分析し、サントリーの成長についても迫りたいと思います。
飲料大手の業績は?
まずは、近年の動向について大枠を確認してみましょう。 今回は、飲料大手3社と言われているサントリー、アサヒ、キリンの3社を比較しながら飲料業界を紐解いていきます。はじめに、各社の売上の推移から見てみましょう。
2011年度決算では売上高、営業利益ともに1位の座にあるキリンを残りの2社が追いかける形になっています。しかし、2014年を境に順位付けが大きく変わったことがわかります。
キリンに替わり、サントリーが業界トップを勝ち取ります。それ以降も業界内での順位に変動はありません。全体を見てみると、サントリーとアサヒは順調に売上を伸ばしています。一方、売上が横ばいのキリンは、高い業績を安定して残す超優良企業であることに間違いはありませんが、他社の勢いに押されているという感もあります。
次に、3社の営業利益を見てみます。
ここ数年間、わずかながらではありますが、着実に成長を続けているアサヒ。一方キリンは、2012年度を境に営業利益を落としています。これはブラジル2位のビール会社を買収したものの、ブラジル国内の景気悪化、当該企業の業績悪化の影響を受けてしまったことが原因です。
そして注目すべきは、サントリーです。ここ5年間の間に営業利益額は右肩上がりで上昇を続け、2014年度には飲料業界首位の座を獲得します。その後もトップを維持し、さらなる成長を続けています。
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サントリーの躍進。その理由とは?
では、ここからはサントリー躍進の理由に迫っていきます。 まずはここ5年間についての業績推移を見ていくことにしましょう。
上の図を見ると一目瞭然ですが、サントリーは2012年以降右肩上がりで成長を続けています。2015年度には過去最高益を記録しています。
この数字は、前年の同時期に比べて9.4%の増益となっており、なんと11期連続で過去最高となっています。2015年度の好業績は、北米や中南米でのウイスキー事業が好調であったことが大きな要因のようです。
好調の要因は、海外進出の成功。
サントリーHDが2016年2月16日(月)に発表した2015年度(2015年12月締め)の決算は、売上高が9.4%増の2兆6,867億円、営業利益が12.3%増の1,850億円でした。2014年度に続き、海外事業の好調が好業績に大きな影響を与えました。この数値はいずれも、かつての業界1位、キリンを上回る数値となっています。
また今期(2016年12月期)についてもサントリーHDは売上高を前年比1.6%増の2兆7,300億円、営業利益も1.6%増の1880億円を見込んでいます。
この好調の要因となっているのが海外市場への進出であり、またサントリーが特に力を入れている部分なのです。
サントリーが飲料事業の海外進出に力を入れ始めた背景には、国内飲料市場の飽和感があります。大手企業数社での国内顧客獲得競争のための、販売価格低下や販売促進費用の増加。それに加え、少子高齢化で市場の拡大は見込みにくく、むしろ国内市場は今後ますます縮小していくことも主因となっています。
とりわけ酒類については、その落ち込みが顕著です。国税庁が平成28年3月に発表した「酒レポート」によると、酒類の販売(消費)量はこの約20年間の間に著しく減少していることが分かります。平成8年の966万キロリットル(年間)をピークに、平成26年には833万キロリットルまで落ち込んでいます。
またその中でも、リキュールやその他の醸造酒の販売比率は上昇していることから、大手飲料3社のメイン商品の1つであったビールの販売量は、大きく減少していると言えます。
飲料業界各社は低価格化競争に加え、多額の販売促進費の投入の結果、売上高が伸びても費用が著しく膨張するため、収益がついていかずに減益になってしまうという状況に陥ってしまっていたのです。
そこでサントリーが注目したのが、海外事業です。2009年にはフランスの飲料大手「オランジーナ・シュウェップス・グループ」を3,500億円で、またニュージーランドの「フルコアグループ」を7,500億円で買収しています。これらはアジアや南米などを中心に中所得層が拡大しており、彼らが次に目をつけるであろう健康食品の需要を狙ったためです。
そして、2014年には「米ビーム社(現ビームサントリー)」を1兆6,000億円もの資金を投じ買収するなど、巨大買収を連続してきました。
もちろん他社も海外事業への展開の拡大を目指し、アサヒによる欧州の複数ビール会社買収や、キリンによるブラジル、ミャンマーのビール会社買収なども話題になりました。しかし、売上高に占める海外での売上比率を比べてみると、サントリーは41.5%、キリン28.4%、アサヒ13.5%となっており、サントリーがいかに海外事業に強みを持っているのかがわかります。
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M&Aに成功したサントリー
飲料各社が海外企業の買収に動く中、サントリーが一歩前に出ている理由として、その買収規模だけでなく、買収後の統合にも成功していることが挙げられます。
特に、サントリーによる米ビーム社のM&Aは大成功をおさめたと言え、もちろん統合により単純に売上や利益の規模が大きくなったということもありますが、買収後のサントリーによる米ビーム社の統合が順調に進んだ結果、買収したビーム社自体が前年同時期と比べて123%の売上を残すという、驚くべき成果を挙げました。今後も北米・中南米地域を中心に売上は伸長すると見られています。
買収が行われた当時の佐治社長(現会長)は、ビーム社の買収理由として
「蒸留酒の中でもウイスキーはワインやビールと比べて製造やブランドの確立に時間がかかる。そのため、ブランドの価値や利益率が高い。競争がより一層激しくなっているビールはすでに大企業がシェアを有しており、これから戦っていくのは難しいこともあり、蒸留酒市場を選んだ」
と説明していましたが、この戦略がピタリとハマった形と言えるでしょう。
サントリー、そして国内飲料業界大手の今後
2014年10月にサントリーの社長に就任した新浪剛史社長は
「今後も米国で確実に売上と収益を増やしていく。新興国でも消費が伸びる国を狙っていきたい」
と語り、海外事業の拡大にますますの意欲を見せています。
また、長期的な目標として、2020年にグループ全体での売上高を4兆円(2016年12月期決算は、2兆7,300億円の計画)を掲げていますが、ビームサントリーのさらなる成長、あらたな海外事業の拡大を見越すと、まだまだ成長の余地は十二分にあると言えそうです。
日本を代表するグローバル企業として世界へと規模を広げていくサントリーの動向、またサントリーを追い海外展開を強めていくであろうキリン、アサヒら飲料業界各社の動向には、これからも目が離せませんね。
興味を持たれた方は、各社飲料大手へのエントリーを検討してみてはいかがでしょうか。