ケース面接とは何か
ケース面接とは、面接官から課題を渡され、その解決方法を制限時間内に示す面接形式です。 課題の正解は1つとは限らず、解答を導くまでの思考力や論理性も測られることが大きな特徴。
特に、コンサルティングファームや外資系金融会社では、50〜60%の比重を占めることも多い、重要な面接です。
初見では解けないこと、優秀な就活生が集まりやすいことから、事前の対策が必須となります。
ケース面接が出題されやすい「コンサル業界」についてはこちらの記事がおすすめ!
■なぜケース面接を実施するのか
出題される課題は、実際のコンサルや外資系金融で取り組むようなものが大半。
現場でどう活躍できる人材なのかを測るために、実施している企業が多いと言えます。
逆に言えば、他がどんなに優秀でも、ケース面接の対策を怠ると「コンサルタントとして適正がない」と判断されてしまう可能性もあるのです。
■ケース面接の基本の流れ
①課題が与えられる
「売上が減少傾向にあるアルコール飲料の売上をあげるには、どんな新製品が最適か?」といった、答えがすぐに出ないような課題が出題されます。
②解答作成(15〜30分程度)
課題について考え、まとめる時間が与えられます。 面接官の前で考える場合と、個室に入ってひとりで考える場合があります。
③ディスカッション(10分程度)
課題の回答を発表し、面接官からの質問を受けてディスカッションします。 口頭、もしくは紙やホワイドボードを使っても良い場合があります。
■フェルミ推定とケース面接
ケース面接はフェルミ推定を使って解くことが一般的。 フェルミ推定を理解することで、どうケース面接に応用するかを解説します。
●フェルミ推定とは?
実際の調査が困難な数値を、いくつかのヒントをもとに論理的に概算すること。
データ不足の状況でもある程度の推量が可能なため、コンサル分野でも利用されています。
たとえばフェルミ推定ではこんな質問の答えを予測することができます。
・「現在、日本には犬が何匹いる?」 ・「東京都のコンビニエンスストアの数は何店舗あるか?」 ・「世界で一番売れているお菓子は?」
これらには必ず正解がありますが、そのためには調査が必要です。 調査せずとも、フェルミ推定を使えば目星をつけることができます。
●フェルミ推定を解いてみよう
では「現在、日本には犬が何匹いる?」を例に概算してみましょう。
まず、犬の数を概算するにあたって使えそうな情報を考えます。
・日本において、多くの犬が人に飼われているはず。 ・1つの家庭で1匹程度飼っている場合が多いだろう。 ・自分の周りを見てみると、5家庭に1匹程度犬を飼っているように思う。 ・1家庭平均3人だとしたら、15人あたりに1匹の犬がいることになる。 ・日本の人口はおよそ1.25億人。
→1.25億÷15=833万匹
推定では833万匹となりましたが、実際の調査データを見てみると、日本の犬の数は約900万匹程度とのこと。
もちろん多少の誤差はありますが、このように推論だけで実際に近しい数を予想することができるのです。
●ケース面接にどう使う?
ケース面接では、フェルミ推定によって概算をおこなったうえで、問題解決の手段を示すものが出題されやすいです。
たとえば、「ペット用品専門店で、どのような商品を扱えば売上を向上させられるか?」という問いが出題されたとします。
この場合、先ほどのフェルミ推定を使えば、回答を絞ることが可能になります。
まず、国内のペットのおおよその数が推測できるので、ニーズの高いものは何か検討がつきます。そのうえで、購入頻度や単価、利益率の高い商品が1ヶ月にどの程度売れるかも推測できます。
これらの情報から、売上を向上させるために扱うべき商品を絞り込めるのです。
勘違いされがちですが、ケース面接はあっと驚くアイディアを出す場ではありません。
コンサルタントとして求められるのは、ひらめきではなく、論理的で正しい推論です。
ケース面接の解き方・考え方
■ケース面接を実際に解いてみよう
ケース面接やフェルミ推定について理解したところで、実際の例題を使って解き方を解説していきます。
では、この問いを考えていきましょう。
■ケース面接の思考ステップ
ケース面接は、以下のフローで考えると成功しやすいです。
それぞれ、実際にやってみましょう。
①課題の整理をする
まずは自分の中で、出題内容を噛み砕きます。 例題でいえば、以下のようなことが整理できるでしょう。
・1冊400円でうち70%が利益=1冊の売上で280円の利益が出る。 ・1ヶ月で100万円の利益を出すためには、3600冊以上を新たに売る必要がある。 ・30万部売れている=1冊あたり10万人程度の読者がすでに購入している。 ・すでに刊行済みの書籍なので、そのまま売っても売上は伸びないだろう。 ・『A』はヒット作のため、ファンは見込める。
②戦略を立てる
次に、実際にどんな戦略が可能か大枠を考えます。 販売戦略の場合、「伝説のマーケター」と言われたジェイ・エイブラハムの考え方に当てはめると考えやすくなると言われています。
これを例題に当てはめると、以下のようなことが考えられます。
・(A)より多くの読者に『A』の魅力を伝える ・(B)1冊あたりの値段を上げる ・(C)『A』の読者が、複数回書店に行きたくなる仕組みを作る
③実行案に落とし込む
方向性が見えてきたところで、具体的にはどんな方法があるかを検討してみます。 先ほど出てきた(A)〜(C)を実現可能なプランに落とし込んでみましょう。
・(A)より多くの読者に『A』の魅力を伝える →プラン例(A):過去に連載していた、同社の週間少年漫画誌に広告を出す
・(B)1冊あたりの値段を上げる →プラン例(B):3冊をまとめてケース入り特装版を作り、1冊あたりの単価を上げる(※新たに作るのは特装版用のケースのみで、1〜3巻の中身は変えない)
・(C)『A』の読者が書店に複数回行きたくなる仕組みを作る →プラン例(C):書店ごとに違う店舗特典をつける
④実現可能性を検討する
最後に、思いついたプランをそれぞれ概算して、最も合理的でニーズに沿ったものはどれか見極めます。 プラン例(A)〜(C)を概算してみましょう。
・プラン例(A):過去に連載していた、同社の週間少年漫画誌に広告を出す
まず、雑誌の発行部数をフェルミ推定で概算すると、日本の人口の1割が子どもだとして、男子向けの雑誌のため÷2をします。
少年の数が600万人だとして、そのうち漫画雑誌を購入するのは10人に1人程度だとすると60万部ほどが発行部数と推測されます。
60万部のうち、すでに購入している読者10万人を差し引くと、ターゲットは50万人ほど。しかし、連載時に購入しなかった読者も多いため、厳しく見積もって500人に1人程度が新規購入すると推測します。
50万÷500=1000人 1000人が3冊全巻購入したとしても、販売数は3000冊 最低販売数3600冊に及ばない。
→目標利益の達成が困難なため、プラン(A)は却下。
・プラン例(B):3冊をまとめてケース入り特装版を作り、1冊あたりの単価を上げる
ケース入り特装版を作ることで、すでに購入済みの10万人の読者のうち、1割が再度コレクションすると推定すると、1万部の売上が見込める。
1冊50円の値上げをおこない、特装版を3冊で1500円と仮定した場合
1500円×1万部=売上1500万円×70%=1050万円
→ケース入り特装版の製作・搬入費が1050万円-100万円=950万円以内におさまれば、プラン(B)は実現可能。
・プラン例(C):書店ごとに違う店舗特典をつける
発売直後なら、特典を集めたい読者が、複数店舗を回って購入する可能性もあります。しかし、すでに発売されている書籍のため、読者の多くは購入済みです。
豪華な特典であれば読者のコレクション欲で売上を動かせる可能性もあります。 しかし、全国の書店に無料で複数配布することを考えると、実現可能性が低いアイディアといえます。
→プラン(C)は実現可能性が低いため、却下。
■ケース面接の回答方法
答えが絞り込めたところで、面接官への伝え方について見てみましょう。 先ほどのケースだと、「3冊をまとめてケース入り特装版を作ればいい」という回答だけではNGです。
ケース面接の回答では、
を指定された時間内に簡潔に伝えなければなりません。
実際のコンサルタントの仕事でも求められる素質だからです。 また回答は抽象的にせず、なるべく具体的な数値・アクションで示すべきです。
たとえば先の質問なら、
というような形で、コンサルタントとしてどう答えるかを意識して、回答しましょう。
答えが単なるひらめきや根拠のない思いつきではなく、論理的に考えられたものであることを伝える必要があるのです。
よって、ケース面接の問題を考えるときは、考えたことや概算内容をメモして残しておくようにしましょう。
記憶だけで答えようとすると、あやふやになりがちです。メモを辿れば自信を持って回答しやすくなります。
■ケース面接はどこで評価されるか
ケース面接において面接官がどこを見ているかもお伝えします。 回答の際に、以下の点を意識すると、コンサルタントとして高評価を得やすくなります。
●論理的思考力
ケース面接において最も重視される観点です。 回答を導く過程で、論理が飛躍していないか・一貫性があるかに注意しましょう。
このために、ケース面接の解き方で示した「思考のステップ」を必ず踏むようにします。
また、回答を導けたら、破綻している箇所がないか、他により良いプランがないかをきちんと見直すようにしましょう。
回答をメモで残しておくと、見返したときにおかしなところがないかも確認しやすいのでおすすめです。
●コミュニケーションスキル
実際のコンサル業務では、チームメンバーやクライアントとの円滑なやりとりが必須となります。よって、ケース面接でもコンサルタントに欠かせないコミュニケーション能力があるかは見られています。
回答する際には、自信をもってハキハキ伝えるようにしましょう。 正しいことを言っていても、しどろもどろではマイナスな印象を与えてしまいます。
また、回答時はただ一方的なプレゼンをすれば良いのではなく、面接官からの質問に答え、ディスカッションを成立させる必要があります。 相手の話をよく聞き、リアクションを見ることで、適切な受け答えを意識しましょう。
どうしても課題が難しい場合は、面接官に助言のお願いや質問をしてもOKです。 もちろん、的外れな内容や質問ばかりでは印象が悪くなってしまうので、自分で考えたうえで根拠となるデータや、道筋の確認をおこなうと良いでしょう。
●プレッシャー耐性
ケース面接では、すぐに答えが出ないような課題に対し、決められた時間内に面接官を納得させられるような回答を用意する必要があります。 時間配分を考えつつ、冷静に課題と向き合うことができるかも評価要素です。
さらに、回答の際の面接官とのディスカッションで、かなり細かな部分まで突っ込まれる可能性もあります。間違いや論理の破綻を指摘されることも多々あります。
しかし、プロのコンサルタントでさえ、ケース面接を完璧にこなすことは至難の業。 これは仕方のないことだと受け止めましょう。
避けるべきは、無言になってしまったり、考えるのを諦めてしまったりすること。 コンサルタントに欠かせない素質として、相手の指摘をきちんと吸収し、自分なりに考え続けられるかも見られています。
コンサルや外資系金融では、考えることが好きな人物が好まれやすいです。 ツッコミに動じるのではなく、あくまで課題やコミュニケーションを楽しみながら、最後まで向き合おうとする姿勢を崩さないことが重要なのです。
ケース面接でありがちな失敗
ケース面接の回答方法がわかったところで、コンサル・外資系金融の面接で多くの人がハマりがちな失敗とその対策方法を解説します。
●準備不足で、回答できない
これは最もよくあるパターンですが、ぶっつけ本番で挑んでも、太刀打ちできません。 少なくとも、ケース面接の際の考え方・答え方はきちんと対策していくようにしましょう。
ケース面接にはいくつかのパターン・決まった道筋があるため、慣れるほど良い答えを導きやすくなります。
また、コンサルティングファームごとに出題傾向があるため、志望先ではどのような課題・回答が好まれるのかの情報収集も欠かさないようにしましょう。
●型にはめすぎて、自分で考えられなくなる
逆に、ケース面接の対策をしすぎたせいで、柔軟な考えができなくなってしまうという人もいます。
たとえば問題集の回答通りに考えようとして、課題の重要な前提条件を無視してしまったり、回答の幅を狭めてしまったりというのがありがちです。
この場合、大きな考え方は間違っていないことが多いので、面接官とのディスカッションで難点を指摘される可能性が高いです。 これを、素直に聞き入れて違う考えができるかどうかが評価の分かれ目となります。
どんなに対策をしても、完璧な答えが出せる人はプロのコンサルタントでもほぼいません。対策をしたからといって過信せず、柔軟性は失わないようにしましょう。
●正確な推論にこだわりすぎてしまう
よく勘違いされますが、ケース面接では必ずしも正確な数値を出す必要はないです。 論理が破綻していたり、そもそもの目の付け所が誤っていたりするのはNGですが、コンサルタントとして考え方が大きく間違っていなければ評価してもらえるのです。
フェルミ推定や推論を正確におこなおうとするあまり、制限時間内に回答できないという人が多いです。
これはマイナスになってしまうので、細かな数値にこだわるよりも、大筋として間違っていないかを重視して考えるようにしましょう。
また、もし最後までいきつかなかった場合も、考えられたところまでは必ず回答するようにしましょう。
ケース面接の対策方法
■ケース面接のフレームワークを習得する
ケース面接で出題される課題の多くは、先ほどの例題で使った「エイブラハムの理論」のように、「決まった考え方」を当てはめることで、考えやすくなるものが大半です。 こうした考え方のことをフレームワークと呼びます。
「エイブラハムの理論」のほかには、たとえば近年のインターネットにおける売上施策として「AISAS理論」なども有名です。
消費者はネットで購入する際に、「Attention(認知)→Interest(興味)→Search(検索)→Action(購買)→Share(共有)」というプロセスを経ることが多いというものです。
ネット施策を考える際には、このフレームワークに沿って考えると課題の回答を導きやすくなるでしょう。
こうしたフレークワークを学ぶことで、切り口の引き出しを増やしていくと、ケース面接をクリアしやすくなります。また、将来コンサルタントとして活躍するためにも必須の知識です。
フレームワークにはさまざまなものがあるため、ケース面接やコンサルティング関連の書籍で学んでみることをおすすめします。
■ケース面接の問題集を解いてみる
やはりケース面接対策のためには、たくさんの問題を解いておくことが重要。 コンサルや外資系金融志望者は、1冊は問題集を購入して自分で回答できるようにしておきましょう。
出題される課題には、いくつか決まったパターンがあります。 たとえば、以下のようなものが頻出です。 自分でこれらの問題を日常的に考えてみるようにするのも訓練になります。
<ケース面接の主要パターン>
●売上を向上させる課題
【課題例】 ・飲食チェーン市場の売上を2年で3倍にする方法を考えよ。 ・電子書籍の市場規模拡大のために有効な施策はあるか。
【解き方のパターン】 頻出問題の一つ。先出のとおり、売上についてはエイブラハムの理論(顧客数を増やす/1回あたりの単価を上げる/来店回数を増やす)を使って考えると良いです。
●利益を増やす課題
【課題例】 ・都内の老舗旅館を再生するためにはどうすれば良いか。 ・とある服飾雑貨店の利益率が激減している。取るべきアクションを示せ。
【解き方のパターン】 利益の場合、売上のみならずコストも考える必要があります。エイブラハムの理論を使って売上を最大にし、同時にコストを最小にする方法を検討しましょう。
●二者択一課題
【課題例】 ・テレワーク制度は継続すべきか。 ・義務教育におけるプログラミング授業は必修化すべきか。
【解き方のパターン】 はい/いいえのどちらかで答えられる課題です。どちらの選択肢を選んでもOK。ただし、選んだ理由を論理的に説明し、面接官を納得させる必要があります。
●公共課題
【課題例】 ・選挙における投票率を上げるために考えられる施策は何か。 ・男女共同参画を進めるためにはどうすべきか。
【解き方のパターン】 ある程度、課題の背景知識があると回答が有利になります。新聞などで時事問題をチェックしておくといいです。
●新規事業課題
【課題例】 ・ゲーム会社Bがヘルス事業に進出する。ヒットする新規事業を考えよ。 ・50万人以上のユーザーを確保できるような、婚活アプリの案を立案せよ。
【解き方のパターン】 「なぜその事業なのか」「先行投資額はどの程度必要か」「いつ頃黒字化するのか」など、さまざまな要素を組み合わせて考える必要があり、回答が難しいものも。新規事業の実際の成功例を学んでおくと、コンサルタントとしての良い着眼点が養える。
■コンサルや外資系金融のOBOGにケース面接をしてもらう
問題集などで対策をし、ある程度自信がついたら、コンサル・外資系金融に所属しているOBOGに相談するのがおすすめ。
ひとりで勉強していると思考が凝り固まりやすいですが、実際にコンサル分野で働いているプロとディスカッションすることで、新たな考え方や道筋を示してもらえます。
自分で解いた課題を発表して、コンサルタントから見て論理に破綻がないか、変な癖がないかも見てもらうと良いでしょう。
ケース面接対策はエンカレッジで
以上、本記事ではケース面接について解説しました。
最後にポイントをまとめると
・ケース面接はコンサルや外資系金融で必須の面接形式である。 ・限られた時間内に、難しい課題を論理的に考える必要がある。 ・課題にはパターンがあり、フェルミ推定などを使って概算して解く。 ・面接官とのディスカッションでは、対話や考えることを楽しむ姿勢を見せる。 ・ひらめきより論理性が重要で、事前に課題を解いて慣れておくべき。
となります。
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