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日本政策投資銀行での、若手のキャリアと成長環境【喜多恒介が訊く】

喜多恒介が訊くシリーズ、今回は日本政策投資銀行、濱田一利(はまだ・かずとし)さんにお話を伺いました。「政府系」「金融」の会社というイメージが強い日本政策投資銀行ですが、具体的なイメージを持っている人はあまり多くないのでは。今回は、その具体的なキャリアや成長環境について伺いました!(記事内容は、2018年当時のものです。)

日本政策投資銀行での、若手のキャリアと成長環境とは?

喜多恒介が訊くシリーズ、今回は日本政策投資銀行、濱田一利(はまだ・かずとし)さんにお話を伺いました。

前回は、その具体的な業務内容についてお伺いをしました。今回は、具体的なキャリアパス・成長環境・社風について伺います。

カタそう、真面目そう、なんてイメージを持ちがちな「政府系」「金融」ですが、そのイメージとは異なる「情熱的」な部分がさらに垣間見えるかも。

ぜひ皆さま、目を通してくださいね。

日本政策投資銀行でのキャリアパス

---前回は「日本政策投資銀行の業務内容とは」について、お伺いをしました。今回は、具体的なキャリアパスや、個人の仕事についてお伺いできればと思います。いろんな部門に挑戦できる・留学に行くことができる、そんなお話を聞いているのですが、具体的なキャリアパスはどんなものでしょうか?

濱田:キャリアパスは、最初の10年間が一つの目安です。最初の10年はいろんな部署を経験する時期。私自身も「投資部門」「審査部」「支店」そして今の「人事部」と、様々な部署を回ってきています。

では、なぜジョブローテーションがあるのかというと、日本政策投資銀行には、みなさんが考えているよりも多くの仕事があり、実際に具体的な経験をしないと深くは身につきません。

銀行のあらゆる領域を経験して、金融のプロとしての素地を作りましょう、というのも一つ重要ですし、10年をかけて様々な領域を経験することで、自分の強み、特性、やりたいことというのが経験を伴って見えてきます。

そこからは、自分の強みを持ってこういう領域で頑張りたいと専門性を高め、より大きな活躍をしていくというフェーズになります。

さきほど留学というお話がありましたが、そんなフローを通じて「今までの業務を通じて学んだことを元に、アカデミックな場で一度体系立てて学びたい」「より深い専門性を身に付けたい」と感じた人が、留学という選択肢を選ぶケースもあります。MBAを取る人が多いでしょうか。

---実は日本政策投資銀行で働いている友人がいるのですが、スタンフォードに留学に行くとか。かなりトップレベルの大学に留学する方が多いですね。あとは、費用も会社が負担してくれると聞いています(笑)

濱田:そうですね。オックスフォード、ケンブリッジ、ハーバードなど、トップクラスの大学に留学をしている人が多いです。逆に言えば、トップレベルの大学で沢山学んできて、世の中にその分貢献しろということかもしれません(笑)

でも、留学も大変です。費用は負担するものの、大学を会社が紹介するから誰でも留学できます、なんていう制度があるわけではありません。日中は業務をしながら試験勉強をすることになります。

硬い意志がなければ難しいとは思いますが、努力を惜しまず、挑戦したいという人にはチャンスを与える会社なのは間違いありません。

「金融業界」なのに、若手が挑戦できる?

---では、2-3年のローテーションというお話がありましたが、その中ではどんな業務を経験して、どんな成長が得られるのでしょうか。

濱田:先ほどもお話しした通り、本当に様々な業務があるので、あくまでも少しの例を挙げるというぐらいになりますが...。

「支店業務」は、若手の成長機会という位置付けでもあるので、多くの職員が経験をしますから、具体例として適切かなと思います。

私自身も経験をしましたが、支店業務は、その地域のお客様に対して融資や投資のご提案をしたり、経営者が抱える課題に対してコンサルティングを行ったりというのが主な業務です。

支店に配属されると、おおよそ20社、30社の企業を担当し、まずはそのお客様に対してしっかりと資金をご提供することが一番の基礎となりますね。その後、新しいお客様を見つける営業も経験します。

---若手でも2,30社の企業を担当するんですね。

濱田:「成長」というお話がありましたが、そこがまさに成長のポイントで、いわゆる「若手の裁量」が大きいのが日本政策投資銀行の特徴です。

我々は1,000人ちょっとの会社です。総合職の同期は30人から40人と、学校の1クラス分ぐらいの規模です。そうすると、必然的にチャンスは沢山与えられます。

それこそ私も、1年生の時には商社との共同投資案件を担当しました。もちろん先輩上司のサポートは受けながらですが、億単位の案件を20代から主体的に動かしていくことになりますね。

それこそインフラに関わるような領域であれば、数百億円という単位の仕事にも携わることになります。

---若くして、数百億ですか...。そう考えると、金融というものを取り扱う以上、お客様も経営者クラスの人が出てきますよね? すると、若手のうちから経営者とやり取りをする...相当成長しそうです。

濱田:そうですね。お客様と信頼関係を築き、「日本政策投資銀行」という看板を磨いてきた先輩たちのおかげもあって、若手の担当者であっても、経営者クラスの方にお会いすることが多いです。

地方の支店は特に顕著です。私は入行5年目に四国支店に赴任しましたが、地方の有名企業や優良企業を担当させていただきました。

地方の有名企業というと、他の銀行にとっては30代、40代のエース級の銀行員が担当するような企業。そんな機会を若くして経験できたのは、私にとっても凄く魅力的な経験でした。

また、経営者の方々からすると、当時の私みたいな20そこそこの担当者なんて、孫や息子みたいなものです。そんな面からも、経営者の方々にすごく可愛がっていただきました。「若くて何にもわかってないだろうから、教えてやるよ」みたいな感じで(笑)

---いいですね。人情味溢れるような。私も地方に行くことが多いですが、地方の方々は本当に優しい方が多いですよね。

濱田:そして、そこでの経験がのちに凄く活きてくる。

我々の主な業務は「融資」や「投資」とお話をしましたが、「お金を出す」というタイミングは一瞬です。

そこに至るまでに、お客様の状況を見ながら金融面でのアドバイスをしたり、金融以外にも経営全般の相談も行います。我々の経験であったり、業界動向を踏まえたあらゆる情報を元に、コンサルティングをしていくんですね。

そうして、資金が必要になったタイミングで、いよいよ「融資」「投資」というフェーズが来るという仕事です。

その長い「コンサルティング」の部分の基盤となっているのはまさに若手時代に経営者の皆さんに様々教えていただいた部分になって来るわけです。

ー素晴らしいですね。ただお金を勘定するだけではなくて、人情の部分が凄く大きい。また、コンサルティングの部分ではイマジネーションやクリエイティビティの部分も重要になりそうです。

日本政策投資銀行の社風・風土とは?

---そんな部分も踏まえると、日本政策投資銀行にはどんな人が多いのでしょうか?「人情」もそうですし、一方でお金の勘定をする冷静さや明晰さも必要そうですね。

濱田:難しいですね(笑) ただ、学生さんからよく言われるのは「金融・銀行」ってなんかカタい仕事だよねと(笑)

---そうですね(笑)

濱田:そこに「政府系」なんていう単語がついているものだから、なおさらカタいよねと(笑) もちろん、仕事の内容は真面目です。お金を扱う仕事ですので責任は大きいです。ただ、業務内容は真面目ですけれども、人柄としてそんなにカチカチってわけではないのかなと思っていまして。

---そうなんですよね。僕も知り合いはたくさんいますが、インテリジェンスがあって、ノリもよくて、熱いところもあって、そんな人が多いです。

濱田:そうなんです。結局は今までお話をしてきたお話のまとめになってしまうのかなと思います。

それこそ、公共性が高い仕事なので、そういった想いを持っている人。 そして、企業の成長に向けて「情熱」を傾けられる人。経営者の想いに共感して、一緒にリスクをとって物事を成し遂げたいと感じられる人が多いんですよね。

想いあっての金融というか、その部分がベースにあって、さらに金融知識を兼ね備えた人が集まっている、というイメージですね。

「やりたいこと」にこだわりすぎるな

---ありがとうございました。最後に是非、濱田さんから就活生へのメッセージをお願いいたします。

濱田:みなさん就活に際して「やりたいこと」を決めようという気持ちが強いように感じます。

それは採用側も「会社に入って何をしたいんですか?」「成し遂げたいことは何か?」を明確にして面接に臨んでください、とか言ってしまうのも大きな原因だと思います。

それで皆一生懸命考えて「これがやりたいんだ」っていうのを決めている人が多いと思うんです。

でも、社会人として10年働いた私からすると、学生時代にやりたいことを決めることにあまり意味はないと思うんです。

---なるほど。

濱田:学生時代に考えられることには限界があります。会社に入ってみて、こんな仕事があるんだって気づくような仕事もたくさんあります。それに触れてみて初めてその魅力に気づくこともあります。

そして、今ではIoT、フィンテック、ビッグデータ、たくさんありますよね。 私が入った10年前にはスマートフォンがここまで普及していなかったですし、20年前にはパソコンも今ほど高性能ではなかった。

時代はどんどん変わっていって、世の中から必要とされる仕事も変わっていっているんですね。

すると今「やりたいこと」を決めてしまっても、「世の中から必要とされないこと」になってしまう可能性もある。それでモチベーションが下がったり、なんか違ったな、なんていうのはもったいないと思うんです。

だから、やりたいことを考えるのはとても大切なんだけど、凄く具体的には決めなくていいと思います。もう少し大きなところで「手段はわからないけど、こんなことが成し遂げたいんだ」というところを考えておけば良いのかなと。

私自身も、「地元・地域のために役に立つことがしたい」と思って入行しましたが、融資・投資・ファイナンス、そんなことは、今から振り返ると全く理解していなかった。

でも、この会社で仕事をしていると当然、金融というスキルが付いてくるわけです。そして、そのスキルを使って、どんな風に社会に貢献できるのか、ということが凄く明確になってきます。

学生時代は曖昧だった「地域のために役に立つことがしたい」という想いが、今は具現化されてきていますし、具現化する方法は会社にはいってから考えればいい。融資や投資といった、金融に関する知識の有無は就職活動では問題ありません。

皆さんも、現段階で「やりたいこと」を決めすぎるのではなく、長い社会人生活を通じてどんなことを成し遂げるか、社会に対して何を貢献するのか、大きな視点で考えていただければと思いますし、そういった話を情熱をもって話していただけるのを楽しみにしています。