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23歳で1億円のファンドを作り地方活性化をサポートする 小幡氏の取り組みとは

今回は「LEAP」の1セッション「学生ピッチ」の内容をお届けします。登壇したのは、地方創生会議ファウンダー、小幡和輝(おばた・かずき)氏、株式会社manma代表取締役、新居日南恵(におり・ひなえ)氏、株式会社DAN NAKAMURA 代表、中村暖(なかむら・だん)氏。 学生時代から事業に取り組み、20代前半にして大きな成果を出す3名は、どんなキャリアを歩み、どんな風に行動し、成果を出して来たのでしょうか。皆さんと同世代の3名からのメッセージを、ぜひ学びにしてください。

地方創生会議ファウンダー、小幡氏の経歴

井上:それではまず一番目、小幡くんにお話をいただきます。彼は23歳。皆さんとまさに同年代。様々な刺激を受けてほしいと思います。

小幡:皆さんよろしくお願いします。小幡和輝と申します。和歌山大学観光学部の4年生で、普段は和歌山県にいます。

僕は地方創生と言われる仕事をしています。

参加者は東京の方が多いかもしれませんが、少し地方の話をしたいなと思っています。

僕は、地方には良いものが沢山あると思っています。食・文化・建築物などです。ただ、その良いものが知られていない、というのが僕の課題意識です。

では何をしなくてはならないかと言うと、その良いものを発掘し、磨き、発信する人が必要ですし、その為には人が必要です。

そんな背景から、「街づくり」「人づくり」というキーワードで頑張っております。

私は今23歳で、18歳の頃に会社を作りました。でも、僕は15歳まで不登校だったんです。家でひたすらゲームをする生活。だいたい30,000時間ぐらいゲームをしました。

トレーディングカードも和歌山で一番強くて、全国大会にも参加しました。いろんなゲームタイトルで全国大会に行くような人でした。

いとこも不登校で、いとことゲームで遊んでいました。そのいとこが夜間高校に行きだして、僕もそこに通うことになりました。

そんないとこのつながりで出会った子が、すごく頑張っている子でした。学校に行って部活をやって、生徒会もやりながら、アルバイトもやって、その子が自分でイベント企画をして、地域活性化みたいなことに取り組んでいたんです。それを見て、単純にすごいなって。

そして、彼の手伝いをするような期間がありました。それが16歳の頃です。1~2年ぐらい手伝いをして、イベントづくりの工程や、人が集まる場、それをきっかけにチャレンジをする人を見て、影響を受けました。僕もそういうのをやりたいなって。

僕も街づくりに関わりたいと思い、イベントをやろうと思ったんですね。そこがまさに僕の人生のターニングポイントになりました。

和歌山の魅力を発掘して、みんなで課題を考えて、発信する。まさに先ほどお話ししたことを5年ぐらい前からやり始めました。

で、その初の取り組みが2012年。和歌山市でイベントをやることになり、行政の方もすごく応援をしてくれました。行政の人と、どれくらいの規模のイベントにするのか話をしていて、「50人ぐらいのイベントにします」と言っていたんですね。

そして、実際にイベントを行ったのですが、そこで当日集まったのは、たった3人。

その時、本当に悔しくて泣きまくって。人を集めるって本当に大変なことだなって思ったんです。

「人はなかなか動かないんだ。 僕と同世代の18歳とかだと町おこしとか興味ないんじゃないか」と思いました。

でも、本当に悔しかったので、もう一回やろうと、色んな人に協力を仰ぎました。TwitterやFacebookなどのSNSでも、高校生だと思われるアカウント数千人にメッセージを送りまくりました。

今度は当日60人ぐらいが集まったんです。

和歌山の魅力を知ってもらって、そこから色んな新しいアイデアが生まれたり、参加してくれた人たちが、新しく「これをやろう」って決めたり。

それを見て、やってよかったなって心から思いました。この時、イベントづくりにやりがい、楽しみを覚えた瞬間でした。

そこから色々イベントをやりました。堀江さんに和歌山来てもらって、起業家を増やそうって講演会をしたり、商店街でイベントを開催したり、学校でワークショップをやったりしました。

結局、5年間、和歌山で100回近くのイベントを開催し、累計で5万人くらいの方にご参加をいただきました。

そうしてイベントをしていると、色々な話をいただくようになった。地域の商品づくりやプロモーション企画に関わらせていただいたり、和歌山の観光周りに関わらせていただいたりしました。

様々経験をさせていただいたのですが、長い目で振り返ってみると、やっぱり一番好きなのは、人に関わることだなと。

じゃあ、どういう風に人に関わるかと言うと「チャレンジする人」、もっと言うと「起業家精神を持った人」を増やしたいと思っています。

それは和歌山だけではなく、日本中の課題だと思っています。そうした課題感を元に、現在取り組んでいるのが、冒頭に挙げた、地方創生会議というものになります。

どんなことをするかと言うと、和歌山には高野山という世界遺産があります。そこに、47都道府県全国で活動している人を集めて、サミットみたいなものを開催しています。

まさに今日、このイベントみたいな場ってすごく良いなと思っていて、エネルギーを持っている、熱量を持っている人が集まってくるんですね。

それを、全国から集めたらすごいことになるんじゃないかと。 高野山には大師教会というところがあります。普段は貸してもらえないんですけど、なんとかお願いをして、会場として使わせていただきました。

さらにいろんな分野のゲストをお招きし、来場者も300人近くが集まりました。当日は、ツイッターがトレンド1位になりました。

1億円のファンドを組成、地方の起業をサポートする

小幡:ちょっと話を元に戻すと、日本には課題があるということでした。良いものを掘り起こして、広めていく。

そんな活動をしていく上で、最近僕が意識をしているのが「お金から逃げない」ということです。

結局、何かをやろうと思った時に必ず「お金」がついてきます。そのお金のことを考えずに始めてしまったり、行動し始めてからお金が足りない、なんてこともあるかもしれません。

そう考えると、お金は相当重要だなと思っています。僕自身、昔はお金から逃げたりもしていましたが、事業としてきちんとお金の面も含めて継続していくという意識をすごく強めています。

その中で、最近大事だなと思っているのが、クラウドファンディングなんですよね。僕も1年ぐらいで4回ほどやりました。CAMPFIREさんと一緒に、日本中でクラウドファンディングを立ち上げるということをこの1年間やりました。

例えば、古民家再生のプロジェクトにお金を集めたりしましたし、その他だいたい30プロジェクト、2000万ぐらいお金を集めました。

そもそも地方創生会議も、クラウドファンディングでお金を集めてやったものです。何がいいかとていうと、お金だけじゃなくて、サポーターの方々の想いが集まってくるんです。

地域にこういうものあったらいいよねとか、こういう商品ほしいよねとか、それを一人が思うんじゃなくて、そう思うみんながちょっとずつお金を出し合って作っていく。

その形がすごく良くて、クラウドファンディングと地方創生ってすごく相性がいいなって思うんです。今後ももっと広げて行きたいなと思っています。

ただ、そこには色々課題も感じています。クラウドファンディングで集められるのは数百万円。ただ、大きなプロジェクトをしようと思うと、数百万では足りない場合もあるんです。

ですので、次のステップとして地方で起業家を増やすために、実は5日前にファンドを作ったんです。1億円を集めて、地方の起業家に投資するということをちょうど5日前から始めました。

このモデルで重要なのが、最初からファンドで投資をするのではなくて、まずはクラウドファンディングから始めるということです。

まだ何もないことに対して、300万円が集まるってすごく価値のあることだと思うんですよね。地域の人が、それを強く求めていることの証明にもなります。それをもっと評価していかなきゃいけないと思います。

でも、クラウドファンディングで300万円を集めても、リターンを返さなきゃいけませんし、手数料もありますから、 300万円全部使えるわけじゃない。

じゃあ、その300万円分の想いが集まっているものに対して、我々のファンドから追加で500万円、1000万円の投資をしていきましょうということを、これからやろうとしています。

ベンチャーキャピタルってありますよね。VCが投資するのはITベンチャーがメインです。なぜかと言うと、短期間で一気に価値が跳ね上がらないと回収できないモデルだからです。10社投資して、9社失敗するかもしれないけど、1社が20倍、30倍になったら回収できるっていうのがVCのモデルです。

でも地方の事業は、短期間で上場まで至ることは難しい。すると、既存のVCのモデルでは中々投資ができないんです。

でも、投資を必要としている事業はたくさんある。その為に、投資への対価を株じゃなくて、売り上げのシェア回収など、新しい形で地方の事業をサポートしていけないという点が、新しいチャレンジです。

1億円のファンドを預けていただいたという点に対して、すごく責任感を感じますし、正直ビビっています(笑)

でも、5日前にリリースをした際も、色々なところから反響を貰いました。これから日本中を回って、色んな地方の起業に貢献をしていきたいと思います。

具体的には、25歳以下ぐらいの方に出資をしたいなと考えています。東京で、20代でITベンチャーを立ち上げようと思うと、500万、1000万ぐらいの水準はなんとかなる。

それと同じぐらいの水準で、地方を盛り上げる為に起業をする人たちにもお金が流れるような社会を作りたいと思っています。

もし、自分は地方で起業したいと思っている、とか、周りに地方で起業したい人がいる、そんな場合は是非教えてください。 皆さんと一緒にそんな社会を作っていけたら嬉しいなと思っています。

最後に、僕が意識していることをもう一度まとめると、日本を、地方を盛り上げる為にはもっと多くの人が必要です。 全国でたくさん仲間を作って、地域で埋もれている宝を発掘して、それを日本中、世界中に発信して行きたい。それをもっと加速してやって行きたいと思っています。

是非皆さんも一緒に何か関われたらなと思っていますので、興味がある方は是非お声掛けください。以上、ありがとうございました。

小幡氏がLEAPした「きっかけ」とは

井上:小幡さん、ありがとうございました。僕からいくつか質問をしたいと思います。

昔引きこもりで、ゲームばかりしていたけど、人との出会いがあって、変わったんだということでしたが、とはいえ変われないという人もいるじゃないですか。

そこは自然に変わっていったんですか? 自分で勇気を振り絞って変わりたい、ということだったんでしょうか?

小幡:確かに、僕もこうなりたいと憧れてチェンジしようと部分もありました。

ただもう一つ、振り返ると、学校には行ってなかったんですが、いとこも含めてゲーム友達が何人かいたんですね。

だから、完全に家に引きこもっていた、というのも少し違いますね。人とコミュニケーションを取る機会があったからこそ、新しく人と関わることにも凄い大きなハードルがあったわけじゃなかったと思います。

僕も今、引きこもりの方や不登校の方とお話する機会が多いです。でも、僕のそういう経験を踏まえて、学校が辛いなら行かなくていいけど、学校以外にコミュニティを作ったほうがいいよっていうのをみんなに言うようにしています。

井上:ありがとうございます。それでは、ちょっと本題の方を聞かせてください。

地方創生会議、非常に素晴らしいですよね。そこで2つ教えて欲しいのですが、まず1つ目。

僕も思っているんですが、地方ってまさに宝物だらけですよね。また、テクノロジーの進化の結果、これまでの「地方にいることがディスアドバンテージだ」っていう状況がなくなって行く。

もしかしたら、地方にいることが逆にアドバンテージになるかもしれませんよね。

そこで、小幡さんはそもそもなぜ、地方って宝物だって思ったのか。何かエピソードがあれば教えてください。

小幡:僕の生まれた街は、人口1万人ぐらいの町で、醤油が発祥した町なんですね。

そういうところで育ってきているので、小さい頃に醤油を作ったりしていました。僕にとってはそれが当たり前の経験だけど、他の地域の人は、醤油の発祥の地がどこかなんて知らないです。

あと、やっぱりめちゃめちゃ美味しいんですよね(笑)、スーパーで売っているものとは比べ物にならないぐらい。

そんな風に、知られてないけど良いものってあるんだなと。そもそも生まれた街がそういうところだったのは、「地方は良いものがいっぱいある」という考えを持つ至る上で、すごく大きいなって思っています。

井上:ありがとうございます。ではもう一つ。

地方創生をするために、今回はお金というところで支援する体制を作るわけですよね。 でも、他にも地方には様々な課題ってあると思うんです。小幡くんなりに考えている、地方創生のための課題設定として、お金以外でも考えている部分があれば、教えてください。

小幡:一つ大きいのは、ロールモデルの存在だと思います。

東京では、20代で起業している人ってたくさんいて、出会って話せる機会もあると思うんです。

でも、和歌山にはほとんどいない。若い人から探して行っても30代とか。これって地方ならどこでも同じだなという感覚があります。20台前半に出会わないので、そもそもそういう発想にならないんじゃないかと思います。

そういう機会格差についても、今後仕掛けて行きたいと考えています。

また、今回のファンドは、出来るだけ25歳以下くらいの若い人に出したいなと思ってます。地方で若くして起業する人を応援し、ロールモデルづくりをしたいですね。

もう少し上の世代になると、自己資金や銀行の融資でまかなえて、ファンドを使わなくてもなんとかなる場合も少なからずあると思います。でも20歳でそれをやろうとすると難しいんじゃないかと。

そういう若い人たちの選択肢になればいいなと思っています。

井上:ありがとうございました。それでは、時間になったので小幡君は一旦これにて。またパネルディスカッションにて、ご登壇いただきます。皆さん、盛大な拍手をお送りください!

小幡:ありがとうございました!