人類が初めて直面する「難問」に世界に先駆けて取り組む
ーー医療・介護・福祉領域に特化した事業を行っているLMC(レバレジーズメディカルケア)では、具体的にどのようなサービスを提供していますか?
副島:学生の皆さんにはあまり馴染みがないかもしれませんが、例えば、看護師さんの人材事業の「看護のお仕事」や、介護士さんの人材事業の「きらケア」を運営しています。新規事業として、医療施設向け入退院支援のSaaSシステム「わんコネ」、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などリハビリ職従事者の方の人材事業「リハのお仕事」なども立ち上げています。
どのサービスも、日本が抱える社会課題の中で、もっとも解決が困難と思われている「医療・福祉に関わる人材不足」を解消しようとするものです。最近国が出した「厚生労働白書」によると、2040年に医療・福祉人材が100万人程度不足すると推計されています。今年(2022年)から団塊世代が75歳を迎え始め、これから7年間で75歳以上が毎年200万人ずつ増えていくというデータもあります。そのくらい日本における「医療・福祉人材の不足」は深刻です。
副島:世界規模で考えると、今日本が抱えているこの問題には、そう遠くない将来、他の国々も直面します。その意味で、人類史上初めて超高齢化社会に突入した日本において、世界に先んじて超難問であるこの社会課題に取り組んでいるとも言えます。即効性のある対策がなく、解決が非常に困難であるだけにとても意義を感じています。
ーー具体的にはどのような方法で挑んでいるのですか?
副島:「医療・福祉人材の不足」の社会課題に対しては、人材が足らない職場に人材を供給するだけでは不十分で、労働環境を改善したり、仕事への理解を深めてなり手を増やしたりすることも非常に重要です。
本来であれば、看護師さんや介護士さんなど、医療・福祉の現場で働いている皆さんはもっと社会の中でリスペクトされるべき存在です。でも実際には、お医者様にフォーカスが当たってしまったり、「患者さんの命が最優先」という雰囲気の中で疲弊してしまう方が後を絶たなかったり、あるいは身体的にも精神的にも体調を崩してしまったりする例もあり、理想とはかけ離れた過酷な労働環境が問題になっています。
その現実を、「テクノロジー」と「人」を介して地道に、しかし着実に変えていくのがLMCの役割です。
例えば、LMCの営業メンバーは、看護師さんや介護士さん、一人ひとりの人生を最優先し、無理なマッチングはしません。職場候補に関してネガティブな要素があれば率直に伝えた上で納得して次の職場を選んでいただけるように徹底しています。
求職者Aさんに対して、紹介できるB事業所があるとします。Bは必ずしもAさんの希望をすべて満たしていないが、現時点で紹介できる就職先はBしかない。そういう場合は、BをなぜAさんに紹介するのか、ポジティブな部分もネガティブな部分もきちんと伝え、フラットに判断できるように努力します。「事業として今月の数字を達成するために、とりあえず紹介しよう、派遣しよう」という発想はしないのです。「事業として数字を伸ばすこと」と「医療・福祉に携わる人材一人ひとりの幸福」を両立させることが、私たちの大前提です。
「現場の声」を拾い続けて、業界のスタンダードを変える
副島:「人材を紹介して終わり」ではない点も、LMCの特徴です。入職後も、その人がちゃんと働き続けられているかのフォローアップを重視します。何か問題が発生していれば、入職者と事業所の間に入って客観的な立場で改善を促すようなチームも社内にあります。「人材紹介・派遣」と「定着支援」、この両輪を回し続けることが重要なのです。
実際の事例をお話します。「看護のお仕事」を通じて、ある病院に入職した看護師さんがいました。彼女が職場で困りごとを抱えていたので、私たちがヒアリングし、その内容を看護部長さんに伝えたところ、看護部長さん自身も気づいていない問題であったため、とても感謝されました。結果、職場環境は改善され、入職された看護師さんもキャリアアップされただけでなく、その後、大病院に転職された看護部長さんから「今度はこの病院でも『看護のお仕事』を使いたい」とお声がかかりました。
こんなふうに、私たちの仕事はとても地道です。でも、確実に職場環境はよくなり、その輪は大きく広がっていきます。繰り返しになりますが、医療・福祉の問題に近道はありません。仕組みや規模で即効性のある施策が打てる類いの課題ではないからこそ、私たちがエージェントとなって人と人のコミュニケーションの隙間を埋め続ける必要があります。
「社会インフラ」になれているという確かな実感
ーー「医療・福祉」はまさに国家レベルの課題。LMCは国を支える重要なインフラにもなりうるのでしょうか?
副島:学生の皆さんもニュースなどで時々「地域包括ケア」という言葉を聞いたことがあると思います。これは、要介護の状態になっても住み慣れた地域で、最期まで自分らしい生活を続けることができる体制を地域内で整えることを言います。これからどんどん進行する超高齢社会において、国が推進している介護のあり方でもあります。
LMCは「地域包括ケア」に関して、仕事内容や待遇にまつわる客観的情報を提供したり、一人ひとりのキャリアデザインを支援したりして、担い手を増やすことに貢献しようとしています。これも社会インフラとしての役割だと思います。
ーー医療・福祉領域ほど、「社会に貢献できている」と強く感じられる領域はないかもしれないですね。
副島:そうですね。今回のコロナウイルスの流行もまさにそうでした。例えばワクチン接種が開始された時には、国や自治体から「とにかく看護師さんをたくさん派遣してほしい」という声が相次ぎ、受け入れ態勢の整備やアドバイス、情報提供までLMCで担うことも少なくありませんでした。
そして実際に声をかけてみると、「こういう時にこそ社会の役に立ちたい」という看護師の皆さんから本当にたくさんの登録がありました。真の意味で、自分たちのサービスが社会の重要なインフラになっているんだな、と実感できて胸が熱くなりましたね。
ーー社会インフラになっていく。それを踏まえて今後の展望を聞かせてください。
副島:今後の展望としては2つの軸があります。1つは医療・福祉領域の人材サービスとしては最大手になること。業界1位にこだわる理由は、事業所さんからの信頼を得て、業界全体でプレゼンスを高め、1年でも早くこの超難問の社会課題を解決したいからです。
2つ目は、人材の紹介・派遣で終わらないこと。「業界1位」を獲得したあとは、業界全体の環境をよくして働きやすい環境を整えることに注力したいです。この業界において入職だけで終わらない「伴走型サービス」をスタンダードにすることで、医療・福祉の担い手がエンドユーザーと向き合える、やりがいのある職場環境を実現していきます。
「医療・福祉」の課題は複雑で、頭脳だけでは解けません。人として総合的な力が試される、挑みがいのある問題です。私たちと一緒に、この超難問に立ち向かいたいという学生の皆さんをお待ちしています。