IT業界の「負」は、「労働力不足」と「多重請負構造」
ーー「レバテック」といえば、エンジニアから絶大な信頼を集めるサービスですが、まずはサービス内容について簡単に教えてください。
小池:エンジニア人材の人材紹介サービス「レバテック」が誕生して今年で16年目になります。現在レバテックには10ほどのサービスがあり、なかでもフリーランスのエンジニア人材を企業に紹介する「レバテックフリーランス」は、登録者数20万人で国内認知度No.1のサービスです。
「レバテックフリーランス」が解決しようとしている社会課題は、主に2つ。1つ目は、ニュースなどでもよく言われている「日本におけるIT人材の不足」です。経済産業省によると「2030年にIT人材が最大で約79万人不足する」と予測されています。
国内IT人材の不足は、企業がイノベーションを起こせず、付加価値も生み出せず、結果としてGDP(国内総生産)は伸び悩んだまま、日本経済全体が成長しないという事態の重要な要因となっています。「レバテックフリーランス」は、限られたIT人材の労働力を、より流動性の高いものにして、その不足を補うことに貢献しています。
小池:もう1つの社会課題は、IT業界特有の「多重請負構造」です。IT業界では発注に発注を重ねて5次請け、6次請けが当たり前。例えば、システムを作りたい会社が、ある企業に月200万円で発注した場合、次の2次請け会社には月150万円、3次請けには月100万、そして実際に作業をするエンジニアには月50万円しか渡らないというケースがよくあります。
これを、「レバテックフリーランス」で発注元の企業と、エンジニアの方を直接に近い形でつなげることで、よりよい条件で仕事を受けられるようにしています。エンジニアの方は月50万円で受けていた仕事を月150万円、200万円で受けられるようになりますし、「来月、即戦力が欲しい!」という企業には最適なIT人材を紹介できます。正社員でエンジニアを採用しようとした場合、最短でも1、2か月はかかりますし、時間をかけても採用できないことがザラです。
このように、「IT人材の労働力不足」と「多重請負構造」の2つの課題に取り組んでいるのが「レバテックフリーランス」です。
「成長できる案件」をエンジニアに提供する
山本:「レバテックフリーランス」で取り組んでいることをもう一つ付け加えると、「IT人材のやりがいや成長」をより醸成し、加速させることです。
日本企業の終身雇用の中では、IT人材の方がやりたい仕事に挑戦して、成長を遂げることが難しいという側面があります。メンバーシップ型雇用で会社から求められる仕事をこなすだけでは、やりがいを感じられない、新しい挑戦ができないといったケースが少なくないということです。
山本:これを「レバテックフリーランス」を利用することで、フリーランスとして自分がチャレンジしたい仕事を選び、やりたいことを実現していく成功体験を積めるようにします。実際に「レバテックフリーランス」の利用者のうち、約半数がフリーランスとして初めて仕事を受けるエンジニアです。
なぜ、そのような「成長」が可能なのか。それは、IT領域の技術動向やキャリア動向を常に把握し、豊富なデータベースをもとに企業とエンジニアをマッチングしているからです。例えば、Aというスキルで実績があるエンジニアに対して、Aに近接するスキルBが求められる案件があった場合、「レバテックフリーランス」での信頼値をもとに「スキルBにチャレンジしてみる」という仕事の獲得ができるのです。
企業も安心して仕事を発注でき、エンジニアも安心して新しいスキルに挑戦できる。「感情貢献」はレバレジーズのすべてのサービスにおいて重視されますが、「レバテックフリーランス」においても、関係者双方の満足を目指しています。
エンジニアと企業の「一生」に寄り添い、日本経済を底上げする
ーー「レバテックフリーランス」以外にも、レバテックにはたくさんのサービスがありますが、全体を通して実現したいことを教えてください。
山本:IT人材の「ゆりかごから墓場まで」を実現できたらと考えています。
レバテックのサービスは、現時点で10ほどあります。「ゆりかご」に近い方から順番にご紹介すると、プログラミングを学びエンジニアリングに初めて携わるところをサポートする「レバテックカレッジ」、エンジニアとしての初めての就職をサポートする「レバテックルーキー」、初めての転職をサポートする「レバテックキャリア」、そしてスキルアップや年収アップを目指したくなったタイミングで「レバテックフリーランス」というふうに、IT人材の一生に寄り添うサービスを展開しています。
山本:さらに言えば、人材紹介だけでなく、エンジニアの方への情報発信や、エンジニア同士のコミュニケーションのためのサービスを複数提供していますし、最近ではスクールの運営も手がけています。なかでも月間利用者のべ約200万人の「テラテイル」は、エンジニアのためのQ&Aプラットフォームで、90万人ほどいると言われている日本のIT人材の大半が利用している国内最大のサービスです。
小池:時系列でサポートしていくという意味では、「エンジニア」だけでなく「企業」に対しても同じです。例えば、イノベーティブな企業であっても、創業間もないベンチャーはなかなかいいIT人材を採用できないという問題があります。そこで「レバテックフリーランス」を通じて優秀なエンジニアをマッチングし、企業にスピーディーに成長していただき、日本のIT業界全体を底上げしていきたいと考えています。実際に、ごく小規模の時期から「レバテックフリーランス」を利用していただき、売上数千億円規模の企業に成長した例もあります。
2030年までに「IT人材不足」を解消できる自信はある
山本:日本のIT人材については、よく悲観的なことを言われますが、実は私たちはそれほど心配していません。なぜなら、2030年までにIT人材の不足を解消できるだろう、という見通しがあるからです。「エンジニアと企業を直接つなげる」「エンジニアと企業の生産性を伸ばす」「エンジニアとIT企業の絶対数を増やす」この3つのアプローチをレバテック系サービスで続ければ、2030年までに結果は出ると思います。
それを実現しうるだけのノウハウやデータ、資金が十分ありますし、レバテックのサービスは日本のIT史上に残るサービス、IT領域に限らず日本の経済成長を左右するサービスだと私たちは本気で考えています。そのくらいの自負と自信を持ってやっています。