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~JTの現在地とこれから~ 逆境の先にある たばこビジネスの可能性

変革の真っただ中にあるたばこビジネス。「大人の嗜好品」という文化を残していくために今、力を注ぐ地域密着型総合営業の最前線では何が起きているのか。そしてJTは、未来をどうつくっていくのか。

Masayuki Shiraogawa 白男川 正行

北海道支社長 1989年入社 一橋大学 商学部 卒

入社3年目にドイツ・デュッセルドルフ事務所に勤務となり、その後、ロンドン、台北、ジュネーブなど長年の海外勤務を経て、2016年に帰国。同年7月に四国支社長、2019年1月から現職。

2方向から迫る逆境に新たな戦略で切り返す

JTは、たばこ市場の約3割を占める加熱式たばこにおいて、競合他社に先行され、大きな影響を受けています。

これは私たち自身が招いた逆境です。加熱式たばこが登場したのは2000年の初頭。まだ初期のアイデアだったので、当初お客さまの評価は低かったのですが、競合はそこから社会の変化や喫煙者が困っていることにしっかり向き合って歳月をかけて商品を改善し、約15年後に再投入しました。

私たちは、紙巻たばこでナンバーワンという意識が強かったので、完全に出遅れてしまい、今でも追いつけていません。

もう一つの逆境は、社会環境の変化によるもの。SNSの発展により個人が情報発信するハードルが下がり、機会が増えたと思っています。

そして情報の真偽を確認しないままに称賛や非難が起こり、自分の考えだけを一方的に主張する場面が増えていると感じています。こうした多様なものの見方や価値観を否定する流れは、ひいては多様性社会の危機につながると感じています。

科学的に根拠のない噂やそのリスクにのみ焦点が当てられがちなたばこはその最たる例とも言えますが、私たちは、たばこを吸われる方も吸われない方も、皆が笑顔でいられる多様性を認められる社会をつくっていきたい。

そしてそんな社会に長きにわたり続いてきた合法的な大人の嗜好品である「たばこを嗜む」という喫煙文化を残していきたい、これが私たちの使命だと考えています。

地域にとって欠かせない存在になる

こうした逆境をチャンスに変えるために最前線で奮闘してくれているのが北海道を含め、日本各地の拠点で働いている営業担当の社員たちです。

そして、「皆が笑顔でいられる社会をつくり、喫煙文化を次代につなぐ」という使命を果たすための活動が、地域密着型総合営業というスタイルです。

これまでの営業は、たばこ販売店やコンビニエンスストア、量販店などのお得意さまを訪問して、商品の取り扱いや陳列、プロモーションツールを店頭の良い場所に置いていただくよう交渉することが主たる仕事でした。

ところが加熱式たばこについては、この営業スタイルが通用しません。加熱式たばこを愉しむにはデバイスが必要であり、デバイスは言わば電化製品で、価格も高額。でもその機能は実際に試してみないと実感できません。

こうした特徴から、加熱式たばこは店頭に並べていれば売れるというものではなく、「買う前に試したい」、

「どんな困りごとを解消してくれるのか」というのがお客さまの心理。

だとすれば、一人ひとりのお客さまに直接コミュニケーションしていくことが重要だよね、というところから、地域密着型総合営業の入口となるお客さまとの対話を重視した活動がスタートしました。

地域密着型総合営業とは、シンプルに言えば「地域に求められる会社になる」活動のこと。

そのためには、たばこを吸われる方、吸われない方関係なくJTのファンになっていただけることが、一番大事だと考えています。具体的な活動は大きく分けて二つあります。

一つ目はたばこを吸われる方に対する、加熱式たばこの即売会などのダイレクトアプローチや、たばこを吸われる方・吸われない方の共存社会を目指すための分煙コンサルティング・喫煙環境の整備といった、たばこにまつわるお困りごとの解消を進めていく活動。

二つ目は、"たばこという商材や商品を売る"という営業とはまったく異なる全社的な取り組みの一環として、森を育て守る「JTの森」、清掃アクティビティ「ひろえば街が好きになる運動」を支援・実行することや、クリエーターの地産地消「Rethink Creator PROJECT」、持続可能な地域社会の発展を目指す「JT SDGs貢献プロジェクト」など、地域課題の解決を支援するような活動にも取り組みを広げています。

このように"売る"だけではないさまざまな取り組みを通じてJTやJTの活動に関する理解者・賛同者を増やすことが、JTが地域にとって欠かせない存在になることにつながると思っていますし、

それぞれの地域でJTがこうした存在になることで、皆が笑顔になれる多様性が認められる社会の実現、ひいては喫煙文化の継承につながると思っています。

地域営業はやればやるほどおもしろい

日本は北から南まで長く、地域によって気候風土はもちろん文化も異なります。

地域密着型総合営業においても、「皆が笑顔になれる地域社会をつくる」という目指すところは同じですが、その手法は地域によって変えなければなりません。

これまでは本社が決めたことを全国の営業現場で同じように実践するという流れでしたが、地域が抱える課題やマーケット事情については地域にいる社員たちが一番よく知っているため、これからは現場が主体的に考えて行動していくことが必要になってきます。

つまり、決まった型がないから、「自分のアイデアや得意分野を生かして、自由に活動できる」ということ。これが地域密着型総合営業のおもしろさです。

私自身、JTのシェアが日本ナンバーワンの四国から、当時一番シェアが低かった北海道に異動になり、真逆の環境に身をおくことになりました。

毎日がチャレンジの連続。厳しい事業環境ですが、今こそが我々営業部隊が北海道にいることの価値を発揮する最高の機会と感じ、とても楽しく仕事をさせていただいています。

若い人には、「この商品の良さを多くの人に届けたい」「この地域をこんなふうに変えていきたい」という熱い想いを持って、仕事に臨んでほしいですね。

会社概要

日本たばこ産業株式会社 設立    1985年4月 資本金   1,000億円 売上収益  連結2兆926億円(2020年1月-12月) 従業員数  連結58,300名(2020年12月31日現在) 単体7,366名(2020年12月31日現在) 事業内容  国内・海外たばこ事業、医薬事業、加工食品事業を中心とした事業活動

生まれ育った北海道で JTの社員として、なにができるか

Keika Tsuchiya 土屋 慶花

北海道支社 道央第2支店 2017年入社 札幌市立大学 デザイン学部 卒

北海道出身で、入社から現在まで地元拠点で営業に従事。学生時代に絵本コンテストで優勝し出版されたという自身の特技を生かして、独自ポスターの制作、喫茶店での展示会、書道家とのコラボレーション等、JT初の試みを多く手掛けている。

たばこにも、まだまだできることがある

以前はコンビニエンスストアや量販店を訪問するルートセールスが中心でしたが、2年ほど前から地域密着型総合営業へ活動を広げ、札幌中心部の札幌駅、すすきの、大通公園エリアに集中して、JTのファン獲得のための活動をしています。

例えば、喫煙所があるビルのオーナーや管理会社に対して喫煙環境に関する改善提案をしたり、企業の方にモニターとして加熱式たばこを試してもらい、アンケートにご協力いただいたり。

ルートセールスのときとは違ってさまざまな立場の人と接することができるので、とても勉強になりますし、何よりも毎日が刺激的。自身の成長にもつながっていると感じます。

また、地域に根差した活動としては、地元の喫茶店でそれぞれのたばこをイメージしたコーヒーと地元の書道家の書を楽しんでいただく成人喫煙者の方限定のコラボ企画を実施しました。

例えば、たばこのHOPEであれば「希望」など、書道家の方と一緒に皆でワイワイと文字を考えることも楽しかったですし、喫茶店のオーナーに喜んでいただけたことに加え、イベントに参加された地元の方々の笑顔を見られたことが嬉しかったです。

他にも、いわゆる営業活動とは離れ、より地域や社会を意識した活動として、自然環境保全を目指したJTの森の活動や地域の清掃アクティビティ、LGBTの方たちの支援など、たばこを吸われる方、吸われない方関係なく、営業とは異なるさまざまな領域でJTファン獲得のための活動も行っています。

皆で案を出しあって議論しながら、プロジェクトを立ち上げ実践していくプロセスは、いつもワクワクします。

大学時代に学んだデザイン力を生かしてポスターをつくるなど、自分の得意分野でプロジェクトに貢献できること、そして何より自分が生まれ育った北海道の人が笑顔になっていくのを見られること、それが私のやりがいや次のアクションへの原動力になっています。

私は人と関わることを通じて成長していきたいと思い、内定時から営業職を希望しました。

地域密着型総合営業ではたばこを吸われる方、吸われない方関係なく、さまざまな人と関わることができ、日々成長を感じています。その自分の成長を新たな企画に還元し、地元北海道の人々を一人でも多く笑顔にすることで、多様な人が共存できる北海道にしていくことが私の今の目標です。

JTという看板や商品力だけではなく 自分自身の力が試されている

Iori Tsujimoto 辻本 伊織

北海道支社 道東釧路支店 2019年入社 大阪大学 外国語学部 卒

滋賀県出身で、入社後の初任地として釧路支店に配属され、現在も釧路で勤務。地元大学等へのコロナ緊急支援を皮切りに、釧路市への喫煙所寄贈、美しい夕日を楽しみながらたばこを愉しめる喫煙所の設置など、釧路の地域を笑顔にするという強い想いでプロジェクトを成功に導き、多くの社外関係者とのネットワークを構築している。

世界三大夕日の一つと言われる釧路で、たばこを嗜む

企業やメディアや行政に対する渉外活動が、私の地域密着型総合営業の主な仕事。

企業を訪問してニーズに応じた商品や喫煙環境を提案したり、メディアにプレスリリースを持ち込んで記事として取り上げてもらったり、行政に「何かお役に立てませんか?」とアプローチしたり。さまざまな活動を通してJTファンの獲得を目指すことが私たちの役割です。

ルートセールス中心に取り組んでいたときはJTという会社の看板や商品力に頼って活動する場面も正直ありましたが、活動の領域が広がった今は、まさに自分自身の力が試されるときだと思っています。

商品や分煙環境の知識だけでなく、訪問先の企業のデータをインプットし、地域社会のニーズについても把握しておかなければなりません。

努力して勉強したおかげで、企業の担当者の方と会話が盛り上がり、「辻本さんの提案だったら受け入れるよ」と言っていただけると、本当に嬉しいですね。

より地域に根差した活動という観点では、コロナ禍の影響でお困りの飲食店業や観光業の皆さんに寄付をしたり、ワクチンの大規模接種会場の医療関係者の方々にお菓子を差し入れしたり、地元大学に緊急物資として自社グループ会社のパックご飯を寄贈したりと、いわゆる商品を売るための営業という視点を超え、地域のために何ができるかを常に考えています。

また、釧路ならではの企画として、たばこを吸われる方に釧路で最高のひとときを過ごしていただきたいと思い、世界三大夕日の一つと言われる釧路の夕日が楽しめる喫煙所の設置もしました。さらに、もっと釧路の魅力を伝えたいと思い、クリエーターの地産地消をテーマにした「Rethink Creator PROJECT」では、メディアや行政との調整を担当。

同じ目的を持って集まった仲間との絆は強く、プロジェクト終了後も関係性が続いています。

私は滋賀県出身で、縁もゆかりもない釧路での勤務が決まったときは、正直、就活のやり直しも考えたくらい悩みました。でも、見知らぬ土地で新たな挑戦ができることを前向きにとらえ直したことで、今は釧路でキャリアをスタートして良かったなと思っています。

地方での営業は社員数が少ない分、仕事や任される範囲が広く、企画から実施まで自分で取り組めるし、人とのつながりもどんどん広がっていくので、おもしろいですね。

成長のためには、今とは違う環境に身を置くことも必要かもしれませんが、今はまだ釧路で頑張りたいと思っています。

(写真右) Haru Minoura 箕浦 はる

マーケティンググループ 商品企画部 2017年入社 慶應義塾大学 環境情報学部 卒

2017年 北関東支社 さいたま第一支店 2020年 マーケティンググループ 商品企画部 現在は加熱式たばこの商品や顧客コミュニケーションの開発に従事

(写真左) Takaharu Iwano 岩野 高陽

マーケティンググループ デジタルマーケティング推進部 2017年入社 立命館大学 経済学部 卒

2017年 大阪支社 和歌山支店 2020年 マーケティンググループ デジタルマーケティング推進部 現在は「CLUB JT」の戦略立案・企画・運用に携わる

前例も、正解もない。自分の感覚を信じて 新しい企画を生み出す

―デジタルマーケティング推進部と商品企画部の仕事について教えてください。

岩野:デジタルマーケティング推進部は、文字通りたばこを吸われるお客さまとデジタル上でつながり、より良い顧客体験を提供していく部署。

私は、「CLUB JT」というオンラインサービスの運用に携わっていて、お客さまの活動を分析し、デジタルならではの新たな価値の提供や、JTファンになってもらうための情報発信等さまざまな企画を立案しリリースしています。

現在の「CLUB JT」には、主にポイントを貯めてキャンペーンに応募できるポイントプログラムと、喫煙所マップ、オンラインショップ、マガジンの機能があるのですが、たばこを吸われるお客さまにより喜んでいただけるコンテンツを企画・推進するのが私の役割です。

箕浦:商品企画部は、商品開発とコミュ二ケーション開発を行っている部署。私はJTの加熱式たばこであるプルームシリーズのコミュニケーション開発を担当しています。

どういうお客さまに、どんな想いや価値を届けたいかを整理し、広告代理店と議論しながら顧客コミュニケーションをつくりあげていく仕事です。

イベントの企画や、さまざまな領域で活躍されている方を起用したキャンペーンなど、幅広い分野でプロモーション活動を展開。また、私のメインの役割はコミュニケーション開発ですが、フレーバーの開発や加熱式たばこデバイスのバリエーション品の開発等に携わることもあります。

―どういうときに、マーケティングという仕事の難しさとやりがいを感じますか?

岩野:たばこ業界は金融や製薬業界と同じく規制の多い業界で、法律や自主規制で活動に制限が課せられているため、他業界のマーケティングの成功事例をそのまま使うことはできません。

真似できないので、定性・定量データを持って仮説を構築し、お客さまをイメージしつつも、最終的には自分の感覚を信じて企画を生み出していくしかない点が難しいですね。

仮に「お客さまに楽しんでいただけてマーケティング的にも有効」な企画を発案できたとしても、自主規制で実現が難しい場合もありますし、サービスが増えたことでサイト構成が複雑になり、逆にお客さまに不便な思いをさせてしまうこともあるため、「CLUB JT」に実装されるのはほんの一部。

それでも自分の企画が通ってサービスインできたときは、それまでの苦労が報われて本当に嬉しいですね。

箕浦:プルームテックプラスについては、完熟マスカット味とか、最近で言うとエナジードリンク味など、今までにないフレーバーの開発に向けチャレンジを続けています。

期間限定品のフレーバー開発に携わるときは、季節の人々のインサイトを分析し、その時期にどんな体験価値を提供できるのか、というところからフレーバーを探索することが多いです。

世の中の人々に想いを馳せることはもちろんですが、「自分だったら嬉しいか」というある種の〝エゴ〟な視点も忘れないようにしています。

そのようなフレーバーの開発から始まり、社内のさまざまな部署との連携を経て商品がローンチしたときの喜びはひとしお。

そして何より自分が関わった商品を手にとってくださっているお客さまを街で見たときは、心が震えるぐらい感激します。

地域営業で磨いた、エリアに合わせた 戦略思考がマーケティングの仕事で生きている

―地域密着型総合営業をされていたときの経験が今にどう役立っていますか?

岩野:JTの地域密着型総合営業の仕事の一つに、企業や店舗の分煙コンサルティングがあります。

お話しする相手は総務の責任者など、立場が上の方がほとんど。そんな方々に対して、こちらは入社2〜3年目の若手でも、分煙のプロフェッショナルとして提案しなければなりません。

最初は戸惑いもありましたが、回数を重ねるうちに、知識だけでなく、いろんな人に対応できるコミュニケーション力や、お客さまの状況に応じて「この場合のベストってなんだろう?」と考える力が身につきました。

また、営業活動によって市中の喫煙事情について肌で感じられたことは、自分にとって大きかったですね。

現在のデジタルマーケティングの仕事で、ポイントをおさえた企画を発想できるのも、地域密着型総合営業の経験があったからだと思います。

箕浦:私は大宮にある拠点に勤務していました。埼玉は東京のベッドタウン。加熱式たばこのデバイスを東京で先行発売してそのあとに全国拡販する場合、埼玉に住んでいるお客さまは既に東京でデバイスを買っているケースもあります。

「だったら、大宮では加熱式たばこのフレーバーを充実させて、むしろ離れた郊外のお店にデバイスを置いてもらおう」など、自分なりに戦略を立てて行動していました。

私も岩野さんと同じで、こうした経験が今の仕事に生きています。マーケティングの目的はより広く、より多くの喫煙者の方に当社の製品の魅力を伝えること。

とはいえ、すべての人に同じアプローチをするのではなく、購買行動の特徴にあった方法で効果的にアプローチしていきます。

営業時代にエリアの特性にあわせた戦略を自分で考えてPDCAを回した経験や積み上げたノウハウが、今に役立っていますね。

―営業、マーケティングと経験されてきたお二人の今後のキャリアイメージを教えてください。

箕浦:営業とマーケティングの仕事を経て、あらためて思うことは、「売っている商品はたばこだけど、届けているのはお客さまのかけがえのないひととき」だということ。

合理性が重視されることの多い世の中。人間らしい非合理さを認め、愛してあげることは、一人ひとりが自分らしく生きられる多様性社会を目指すうえで大事なことだと考えています。

嗜好品はまさしく人間の愛すべき非合理性が具現化されたもの。でも、自分らしい「ひととき」を提供するための手段はもちろんたばこだけではないと思っています。

だから、「ここで必ずこれをする!」という明確なキャリアイメージはあえて持たず、その時々の役割の中で私なりの「ひととき」をお客さまに提供し続けていきたいと考えています。

岩野:お客さまがたばこを買われる際に「JTの製品を選んで良かった」と思っていただくにあたって、お店(リアル)なのかEC(デジタル)なのかは重要ではありません。

だからこそ、社内においては、JTファンを増やすという同じ目標に向かって進むべく、リアルとデジタルの連動をより強化する「かけ橋」となることが目標です。

そのためには今までの部署間の壁を壊したり組織のあり方を変えたりするくらいのイノベーションが必要。

お客さまの一番近くにいて、お客さまの声を聞き、商品を届けてきた営業経験と、デジタル上でお客さまの活動を見ながらより良い顧客体験を創造するマーケティングの経験、その両方があるからこそ、革新的なイノベーションを実現できると思っています。