公開日:
最終更新日:

就活生の多くが受験生マインド 脱却するための思考法【細谷 功】

細谷 功氏、連載記事第5回。実際にビジネスの場で活躍するには、どんな素養が必要なのでしょうか。勉強が出来た「優秀な学生」だったからこそ陥りやすい落とし穴「正解病」とは?

ビジネスにおける「優秀」になるために

これまでの数回では、仕事を「川上から川下への流れ」ととらえて各々の特性の違いやそこに求められる資質の違いについて述べてきました。

これまでの「勉強ができる」人というのは主に「川下の価値観」で優秀な成績を収めた人であり、必ずしも川上での「仕事ができる」人になるかというのは別問題であるにも関わらず、ビジネスの世界での環境変化はより川上側の人材を求めるようになってきています。

今回は具体的に「川下で優秀な人」がどうすれば「川上でも優秀な人」になれるかについて論じたいと思います。

あなたは「受験脳」になっていないか?

試験ができる人たち」は「正解を出す」ことに優秀です。つまり「勉強ができる(た)人」(本連載のメインターゲットです)が陥りやすい最大の落とし穴の一つが「正解病」なのです。

常に身の回りのものには「正解がある」という前提で行動し、その正解に「速く正確かつ効率的に」たどり着いた人が優秀であるというのが唯一の価値観であることが正解病の人の特徴です。

受験勉強というのは、基本的に正解がある問題に対するものです。小論文や面接など、ごく一部正解が必ずしも一つではないものもあったかも知れませんが、それとてどこかに必ず「模範解答」や「解答の指針」みたいなものが与えられるという点では「正解」に近いものがあったのではないかと思います。

受験というのは「客観的」でなければならず(誰が受かって誰が落ちたかを「誰にもわかるように公平に」説明できなければならないので)、正解がないと受験者や関係者が納得しないので、必然的に「正解がある」問題が中心にならざるを得ません。そのために問題が与えられるとその「傾向」や「正解」を探り出すという癖が、長年試験勉強をやっていると染み付いてしまうのでしょう。

これは何も学生に限った話ではないのです。ビジネスの世界でも多くの人はこの「正解病」から抜けきれない人が多数存在します。例えば高学歴で「勉強ができる」人が多いと想定される大企業の「優秀な」社員にもその傾向が見られます。ここで言う「正解」の例は「以前に成功したこと」や「上司が望んでいること」です。

もちろん会社勤めをするのであれば、結局は「上司に気に入られる人」が昇進していくのが自然だし、多くの仕事は過去の延長によって成り立っていますから、それは決して悪いことではないですが、そうなると「自分の頭で考える」とか「上の人が考えつかないような新しいものを生み出す力」が生まれてくるわけはありません。

このような人たちは、例えば研修を受けても、「...で、自分は結局何をすればいいんでしょうか?」という「正解」を持ち帰れないと不満げな表情のまま帰っていくことになります。 ここで、どうして「脱正解病」が必要なのかを考えてみましょう。まず、会社の仕事を3つに分けてみます(これは会社の仕事に限った話ではなく、皆さんの勉強の対象も同じです)。

まずは仕事の種類の違いを認識しよう

仕事の分類

3つの領域の分け方は、「問い」(問題)と「答え」(正解)の有無によってです。3つの領域の分け方は、「問い」(問題)と「答え」(正解)の有無によってです。

「既知の既知」の領域 まず一番下のレベルが「問いも答えもある」領域です。受験勉強の対象のほとんどはここでしょう。仕事で言えば、やり方が決まっていてマニュアルがある、いわゆる「ルーチンワーク」と呼ばれる領域です。

皆さんが会社に入って始めに仕事を覚えるときにはほとんどがこの領域の仕事のはずです。ところがこの領域の仕事は、「誰にでもできる」ことに加えて、近年ではロボットやAIによって置き換えられています。

つまりこの領域では人間はほとんど必要なくなっていくのです。正解病の人はここまではうまくこなすかも知れませんが、逆にこの先に壁が立ちはだかるはずです。

「未知の既知」の領域 次の領域が「問題はあるが答えがない」という領域で、仕事の対象の主役はこの領域といってよいでしょう。大学の勉強は本来こちらにシフトすべきなのですが、試験対策だけをやっている限りこの領域はあまり直面しないかもしれません。

ビジネスで言えば、「売上を上げるには?」「お客様のクレームを解消するには?」「社員の満足度を上げるには?」といった、問いはあるが、「唯一の正解」があるわけではないような課題です。

ただし、このような場合でも「全く白紙から考える」ような問題は少なく、大抵の場合は過去に類似の問題があったり(試験でいう「過去問対策」ですね)、先輩の知恵を借りられたりといった形で、「正解病」の人でもまあまあの結果が残せるはずです。

「未知の未知」の領域 さらにレベルアップすると直面してくるのが、「そもそも何が問題なのか?」を考えなければいけない場面です(例えば卒論テーマを0から考える場面がこれに相当します)。

ビジネス環境の変化や上述のAI/ロボットの進化によって、どの会社でも業界でもこのような課題の比率が上がってきていることは間違いありません。この「レベル2からレベル3への移行」が特に「正解病」の人にとっての高い壁となって立ちはだかることになるはずです。

これらに対する対処の仕方については本連載でも述べていきますが、まずは自分自身の「正解病」の度合いを振り返ってみてはいかがでしょうか。

前回記事:あなたは川上志向?川下志向?

次回記事:ベンチャーか大企業か?を考える

DoubRingで自分の価値観と多様性を知る

前回に引き続き、DoubRingのご紹介です。

これまでの連載で仕事を見る上での視点としての「川上と川下」という視点を提供してきました。仕事には業界や職種といった見方の他に「そもそものその仕事の特性」を見極め、自分の価値観や強み弱みと併せて考慮するのが重要であるというのがそのポイントでした。

仕事の特性としての川上や川下、他の視点については今後も連載で解説していきますが、ここでは「もう一つの側面」である自らの価値観について考えてみるためのツールを提供します。

それがこのDoubRingです。簡単に表現すると、このDoubRingは2つの基本的な概念に関して自分が考えるそれらの関係性を「2つの円」で9パターンで表現するものです。

まずは百聞は一見に如かずで試してみて下さい(8つの質問に答えるだけで3分程度でできます)。

https://www.surveymonkey.com/r/W2DYR3P

これらからすぐに「あなたは◯◯に向いています」という診断結果が出てくるわけではありませんが、これらの一つひとつの結果、つまりある概念への見方が仕事選びの価値観とどのように関係するのかは連載の中で解説していきます。

まずはこんなシンプルな言葉同士の関係でも人によって大きく違っていることをこれまでの調査結果の例から確認し、自分が多数派なのか少数派なのかを確認してみてはいかがでしょうか。

https://www.surveymonkey.com/results/SM-2TMJ39FN/

※さらに詳細にDoubRingのことを知りたい方はホームページをご覧ください。(https://www.doubring-j.com