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「ヒト・モノ・カネ」がある川下、「自由」がある川上【細谷 功】

細谷 功氏、連載記事第9回。ここ数回のテーマとなっている「大企業かスタートアップか」。今回は「資源」と「自由度」の違いから、その性質を考察します。あなたにあっているのは、どちらの企業でしょうか?

「資源」にみる大企業とベンチャーの違い

川の水量が川上から川下に従って増加していくように、会社でも社会でも常に川上は「ないないづくし」から始まって徐々に川下に行くにしたがって様々なものが蓄積されていきます。

ここでは川上としてのスタートアップ企業的な組織と川下としての伝統的な大企業との差を「ストックの有無」という観点で見ていきたいと思います。

川上の大企業には会社としての様々なリソース(=経営資源)が蓄積されています。具体的には一般に「ヒト・モノ・カネ」と呼ばれる人材、設備(立派なオフィス、工場、ICT、研修設備等)及び資金に加えて、情報やノウハウも川上とは比べ物にならないくらいに充実しています。

そう考えると働く場所としては全てが川下の方が充実しているように思えます。では「ないないづくし」の川上にあるもの、そしてそのメリットは何なのでしょうか?それは一言で表現すれば「自由度」です。

「自由」と「便利」のトレードオフ?

子供(という人生の川上)に「限りない可能性」があるように、スタートアップにも「どう化けるかわからない」というとんでもない自由度があります。自由度というのはいい方向にも悪い方向にも振れ=リスクが大きいということです。

一般にリスクというと負の方向のイメージが強いですが、いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」という言葉の意味するところは良くも悪くも両側に「振れ幅が大きい」ことを意味しています。

人生の川下としての大人は、確かに人脈やお金や家や知識等は子供とは比較にならないほどもっていますが、ある程度一つの職業で実績を上げてしまうと逆に他の職業には移りにくくなります。知識が積み重なると新しいことへの対応力がにぶっていきます。専門性が上がる代わりに汎用性が下がってくるのです。

細胞の進化も汎用的なものから専門分化していきますが、人間も年齢を経るにしたがって、徐々に専門性が上がっていく分汎用性(=どこにでも対応できる能力)は下がっていきます。

大企業に就職すると仕事が分化され、特定の企業や職種に特化していく分、仕事の自由度は下がっていくことになることは理解しておいて損はないと思います。

さらにスタートアップでは、良くも悪くも領域が不明確なので、必要なことは領域を超えて何でもやる必要がありますから、性格的に「自分の仕事はここからここまでと明確に決めてもらえないとストレスになる」というタイプの人には向いていないかも知れません。

まさに人間の長所と短所は表裏一体で、往々にして「用意周到な人」はイレギュラーな想定外のことに対して弱い面を持っています。逆に「準備が適当な人」は想定外のことが起こっても動じないという強さを持っていることが多いですから、これも仕事の適正に大きな影響を与えます。

こう考えてくると川上で働くのは「親元離れて一人暮らし」(常にカネは足りないが、自由に使える時間がたくさんある)のようなもので、川下で働くのは「親と同居」(食うに困ることはないが、何かと自由が制約される)のようなものという違いと捉えれば、学生生活と紐付けたイメージがわくかも知れません。

前回記事「他人に認められる会社」か「自分を満たす会社」か