驚くべき先見性と行動力でゼロから一大観光地を興す
日本のテーマパーク事業のパイオニアであり、今なおリーディングカンパニーとして走り続ける株式会社オリエンタルランド。
同社が運営する千葉県浦安市の『東京ディズニーランド®(TDL)』、『東京ディズニーシー®(TDS)』は、レジャー施設市場の国内シェア約50%と圧倒的な存在感を放っている。
年間入園者数は3000万人を超え、頂点に君臨しているイメージがあるが、同社の歩みは不可能を可能に変えてきたチャレンジの連続だったという。
「創業当時は机が3つあるだけの状態。そこから東洋一のレジャーランド建設という夢に挑んだのです」と教えてくれたのは、人事部チーフリーディングスタッフの秋山華奈さん。
来園客でにぎわう現在の姿からは想像できないが、東京ディズニーリゾート®(TDR)の本拠地「舞浜」は約60年前、まだ海だった。
最初の難事業は浦安沖の埋め立て工事、そして漁業権をもつ漁師たちとの交渉だったという。粘り強い交渉で漁師たちを説得し、6年の年月をかけて埋め立て工事は成功した。
だが、そこからが本当の試練の始まり。誘致は一筋縄ではいかなかった。初代社長の川﨑千春は米国のディズニーランドにいち早く目をつけたが、当初は交渉のテーブルにすらつくことができなかった。
熱意が通じて、やっとディズニー社による視察が行われた時には、富士山麓にある別の土地が有力候補になっていた。 ライバルに勝つために、川﨑は型破りな方法に打って出る。ディズニー社の視察団をヘリに乗せ、上空から案内するという空中プレゼンテーションを行った。「東京から近い」などの利点を訴え、視察は成功。
1979年、ディズニー社と正式なライセンス契約を締結し、TDLはついに開業した。「開業までの約20年間、テーマパークというものがまだ日本で知られていなかった当時は〝絶対に上手くいかない〞という声がほとんどだったそうです。成功する保証はどこにもない、未知への挑戦でした。そうした創業時の挑戦のDNAは今も受け継がれています」(秋山さん)
特筆すべきなのは、同社の先見性と行動力。70年代に策定された「オリエンタルランド基本構想」で、すでに現在の姿のようなテーマパーク、ファッションスクエア、ホテル、交通網などが集積した総合レジャー施設を計画していた。
そしてディズニー社との契約も成し遂げた。TDL、TDS、ホテル、イクスピアリ、舞浜駅やモノレールを備えた「東京ディズニーリゾート」は、まさに夢の結実なのである。
東京ディズニーリゾート、第4の成長ステージへ
2018年6月、オリエンタルランドが「東京ディズニーシーの大規模拡張計画」というリリースを発表した。TDL大規模開発プロジェクトなどは総額4000億円にも上る。それに伴い、ディズニー社とのライセンス延長(2076年まで)も決定した。
新たに設立されるポートのテーマは「魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界」。
ディズニー映画『アナと雪の女王』、『塔の上のラプンツェル』、『ピーター・パン』の3つの世界を再現し、新しいホテルも開業する。完成後は現在の敷地の1.3倍ほどにキャパシティが広がり、体験価値の高い魅力的なアトラクションを導入することで、あらゆる年代のゲストが楽しめる場所を目指す。
業績が好調でありながら、なぜこれほど攻めの姿勢で巨額の新プロジェクトに乗り出すのか。「テーマパークは永遠に完成しない。だからこそ、変わり続けなければならない」というのが同社のスピリットだという。
浦安沖の埋め立て工事、TDL開業、TDS開業を3つのステージと考えるなら、今回の大規模拡張プロジェクトは、オリエンタルランドの第4ステージの幕開けとなる。「誰も体験したことのないリゾートへ」というビジョンのもと、さらなる変化を追求していく。
ダイバーシティのもとではどんな経験も価値になる
TDRの魅力といえば、キャスト(従業員)によるゲスト(お客様)へのおもてなしだろう。
現在は約2万人の従業員が働くTDR。顧客満足向上のためには、従業員満足が何より大切だと同社では考えている。社員のWILL(意志)を尊重したキャリアパスを中心に、結婚・出産・介護と仕事の両立ができる環境の整備を進めている。
昨年はキャスト向けにビジネス学校をオープン。一部を社員化するなど、労働環境の改善にも取り組んでいる。
「私たちは、これまでの成長に満足することなく、さらなる進化・成長を目指していかなければなりません。1つでも多くの『夢・感動・喜び・やすらぎ』を提供し続け、挑戦したいと願う志ある仲間との出会いを待っています」(秋山さん)
プロジェクトを支えるのは〝人と人〟のつながり
経営戦略部で施設開発のプロジェクトリーダーとして、企画立案から施策の実行、開業後のフォローまで、プロジェクトを取りまとめ推進しています。これまでTDSアトラクションやTDL飲食施設のプロジェクトを担当。
現在はTDSの拡張に伴い、社員食堂などのバックヤードを充実させるプロジェクトを進めています。各案件には、運営、エンターテイメント、フード、商品、技術など各部門からプロを集結してチームで取り組みます。
メンバー同士の意見がぶつかることも。
そんな時、そもそも何を目指すのかという本質に立ち返り、着地点を見出すのが私の役目です。
商品販売施設のスーパーバイザーだった時に、ゲストや従業員の満足、収益の最大化を実現するために大切なのは〝本質の追求と共に働く人との信頼関係〞と身をもって学びました。その経験がプロジェクトを引っ張っていく現在の立場に生かされていると感じます。
就業後は大学院に通学し経営学を修得しています。きっかけをくれたのは「常に外へのアンテナを張りなさい」という上司の言葉でした。志をもって自己研鑽を楽しむ人が多く、たくさんの刺激を得られる職場に感謝しています。
〝イベントが必ず成功する〟誰よりも信じる気持ちで
イベントグループに所属し、パークの期間限定スペシャルイベントのプロジェクトリーダーを務めています。
TDRのイベントは、ディズニー社と協力しながら当社にてコンセプトを立案し、エンターテイメント、装飾、商品、フードに至るまでを開発しています。
私はアイデア出しから実施計画の策定、各部署の調整、イベントの運用管理までを手掛けています。また、ディズニーおよびキャラクターの世界観を守りながら、イベントコンセプトがテーマパーク全体で統一展開されるように、各部署を主導しながら連携して開発をしています。
2017年夏のイベントでは水域ショーの新規開発を担当しました。映画の登場人物をデザインしたグッズや、ゲスト参加型のショーなどを企画。リーダーとして情熱をもって、プロジェクトメンバーとの連携に努めました。
裁量が大きくプレッシャーもありますが、大切なのは成功を信じる強い気持ち。自分の考えたコンセプトが実際にパークの中で展開されているのを見た時は、この上ない喜びを感じます。 将来はイベントチームのリーダーになりたいと思っています。数年先まで見越したイベント立案ができるよう、今後も成長していきたいです。
発想をものづくりに生かす 物語の世界を形にするために
専門職(技術)として入社し、現在はパーク内の照明全般の設計・施工管理を担当しています。
新しい照明をつくる場合、映画や物語の世界観を損なわないようにディズニー社のデザイン図を設計・施工できるよう目指しますが、その一方で製品としての安全性やメンテナンス性を追求することも不可欠です。
夢の世界を現実の制約のなかで再現できるように、技術力を発揮することがエンジニアの使命です。耐久性を向上させる設計をしたり、素材選びで世界観を追求したりと、自分の専門知識やアイデアを生かしてものづくりができる点にやりがいを感じています。
担当業務としては以前、TDSアトラクションのテーマライトを担当し、〝子どもの絵〞をデザインした一点物のランタンを手掛けました。最近では今年7月にオープンしたTDSの新アトラクションの照明を製作しました。
一般的なメーカーではエンジニアにとってエンドユーザーは遠い存在かもしれませんが、当社ではゲストの喜ぶ姿を間近で感じることができます。また照明をはじめ、音響、映像、特殊技術や制御技術など、多彩な技術に触れることができるので、挑戦のしがいがある仕事だと思っています。
1分1秒でも早く楽しい時間を届けるために
大学年時にキャストとして働き始めてから約16年、現在はパークサービス運営部でユニットマネージャーを務めています。
エントランスの各業務(チケット受付、入園管轄、ゲストのご案内など)を行う部署を担当するのが私の役目です。また、エントランスの時間帯責任者も兼ねており、現場で働く100名以上のキャストを統括してお客様の入退園を見守っています。
エントランスはゲスト(お客様)全員が必ず通る重要な場所です。1分1秒でもゲストに早く入園していただけるよう、毎日、入園にかかる時間を計測し、数分単位で管理しています。
これまで印象に残った仕事は、ホテル宿泊ゲストによる早朝の入園混雑を解消したこと。
どこで人の流れが滞るのかを仮説を立てて検証し、「園内を担当するカストーディアル(清掃キャスト)たち」にエントランスに出てきてゲストの誘導をしてもらうなど、部署を超えた取り組みを行いました。その結果として入園時間を短縮し、顧客満足を向上することができました。
部署や会社の壁を越えて人財を活用したことは画期的であり、今後も同じように全社をあげてゲストにハピネスを届けられるような施策に携わっていきたいと考えています。